増資と減資
企業が資本金を増やすことを増資、資本金を減らすことを減資と言います。 増資または減資の実施には株主総会の決議が必要です。
増資
資本金を増やすことを増資と言います。
出資を受ける企業は、出資者に対し、出資額に応じた株式を発行します。出資者の保有する株式はその企業の取締役会の議決権となります。取締役や役員の選任・解任は議決権の過半数で決定できるため、企業の発行済株式の過半数を所有する(または過半数を持たなくても支配的な立場にある)出資者を、企業の場合は親会社、個人の場合はオーナーと言います。
増資の種類には有償増資と無償増資があり、有償増資は以下の3種類に分類できます。Jクラブの増資はほとんどの場合が、任意の株主が出資する第三者割当増資であると考えて良いと思います。
- 株主割当増資: 既存株主が持株比率に合わせて出資を行なう。出資後の持株比率は変化しない。
- 第三者割当増資: 既存の持株比率に関わらず、増資の出資額に応じた株式を出資者に発行する。出資後の持株比率は変化する。
- 公募増資: 不特定多数の一般の投資家を対象に株主を募集する方法。
増資を実施するということは発行済株式総数が増えるということなので、第三者割当増資の引受先が全て新規株主である場合、既存株主の持株比率が下がります。したがって増資の実施には既存株主の理解が必要不可欠です。
増資の払込金額のうち1/2を上限として資本金ではなく資本準備金に計上することができます(会社法445条第2号)。普通株式を1株5万円で100株発行する場合、払込金額の1/2を資本準備金に充てるとすると資本金は250万円、資本剰余金等(資本準備金)が250万円になります。
増資の例
年 | 純資産 | 資本金 | 資本剰余金等 | 利益剰余金 | 当期純利益 |
---|---|---|---|---|---|
2017 | 46 | 167 | 120 | -241 | 24 |
増資後 | 1194 | 741 | 694 | -241 | |
2018 | 1161 | 741 | 694 | -274 | -33 |
前年比 | 1115 | 574 | 574 | 33 |
この例では2018年度内に実施した増資によって、資本金が1億6700万円から7億4100万円に、資本剰余金等が1億2000万円から6億9400万円にそれぞれ5億7400万円ずつ増加しています。した がって2018年度の純資産額の変化量は、資本金、資本剰余金等の増加分11億4800万円から利益剰余金の減少分を引いた値、11億1500万円の増加になります。
この場合、今までの資本金を大幅に上回る額の増資が行われているため、親会社やオーナーの変更などクラブの体制に大きな変化があることが推測できます。
増資の可能性
増資の実施をクラブがプレスリリースとして発信するとは限りません。Jクラブ経営情報開示の貸借対照表で以下の特徴があるとき増資を実施している可能性があります。
- 資本金、資本剰余金等が増加しているとき
減資
資本金を減らすことを減資と言います。 株主への配当を行う有償減資は稀で、ほとんどは資本金の減少分を資本剰余金等または利益剰余金(マイナスのとき)に振り替える無償減資です。無償減資の前後で純資産の額は変わりません。
減資の例 (資本剰余金等への振替)
年 | 純資産 | 資本金 | 資本剰余金等 | 利益剰余金 | 当期純利益 |
---|---|---|---|---|---|
2018 | 1161 | 741 | 694 | -274 | -33 |
減資後 | 1161 | 100 | 1335 | -274 | |
2019 | 1168 | 100 | 1335 | -267 | 7 |
前年比 | 7 | 641 | 641 | 7 |
この例では2019年度内に実施した減資によって、資本金が7億4100万円から1億円に減少、資本剰余金等が6億9400万円から13億3500万円に増加しています。資本金の減少分6億4100万円を全額資本剰余金等に振り替えています。したがって2019年度決算における純資産額の変化は利益剰余金の変化分(当期純利益)と一致しています。
この例では減資後の資本金を1億円としています。決算時の資本金が1億円以下であると租税特別措置法第42条で定める法人税率の特例を適用することができます。
減資の可能性
減資の実施をクラブがプレスリリースとして発信するとは限りません。Jクラブ経営情報開示の貸借対照表で以下の特徴があるとき減資を実施している可能性があります。
- 資本剰余金等の変化量が資本金の変化量より大きいとき
- 利益剰余金の変化量が当期純利益と一致しないとき
増資及び減資、減資及び増資
年度内に増資と減資の両方を実施している場合もあります。 このとき増資後に減資を実施する例もあれば、減資後に増資を実施する例もあります。
増資及び減資の例
純資産 | 資本金 | 資本剰余金等 | 利益剰余金 | 当期純利益 | |
---|---|---|---|---|---|
2020 | 16 | 354 | 125 | -463 | 9 |
増資後 | 416 | 554 | 325 | -463 | |
減資後 | 416 | 100 | 325 | -9 | |
2021 | 348 | 100 | 325 | -77 | -68 |
前年比 | 332 | 254 | 200 | 386 |
この例では2021年度内に増資及び減資を実施しています。
増資によって資本金と資本剰余金等がそれぞれ2億円増加し、その後の減資によ って資本金の減少分4億5400万円を全額利益剰余金に振り替えています。
2021年決算時点の資本金は1億円、資本剰余金等は3億2500万円、利益剰余金は減資後の-900万円に当期純損失を加えた-7700万円になります。
増資及び減資または減資及び増資の可能性
増資及び減資または減資及び増資の実施をクラブがプレスリリースとして発信するとは限りません。Jクラブ経営情報開示の貸借対照表で以下の特徴があるとき増資及び減資または減資及び増資を実施している可能性があります。
- 資本金の減少分が、資本剰余金等と利益剰余金等の増加分から当期純利益を引いた値と一致しないとき
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