債務超過の解消方法
Jリーグクラブライセンス制度では財務基準として「債務超過の禁止」が定められていますが、新型コロナウイルスの影響により特例措置が設けられ、2021年度決算では計12クラブが債務超過の状態になっています。
債務超過のクラブはどのように債務超過を解消すればいいでしょうか。
債務超過
年度 | 純資産 | 資本金 | 資本剰余金等 | 利益剰余金 |
---|---|---|---|---|
2013 | -677 | 31 | 0 | -708 |
純資産額は資本金、資本剰余金等、利益剰余金の総和です。このうち資本金と資本剰余金等はマイナスの値を取ることはないので、債務超過とは利益剰余金のマイナス、すなわち累積赤字が資本金と資本剰余金等の合計よりも大きい状態と言い換えることができます。したがって債務超過を解消するには、利益剰余金のマイナスを小さくするか、資本金と資本剰余金等を大きくする、あるいはその両方が手段となります。
債務超過解消の手段
1. 純利益による解消 (利益剰余金のマイナスを小さくする)
年度 | 純資産 | 資本金 | 資本剰余金等 | 利益剰余金 | 当期純利益 |
---|---|---|---|---|---|
2013 | -31 | 876 | 0 | -907 | 6 |
2014 | 16 | 876 | 0 | -860 | 47 |
差分 | 47 | 0 | 0 | 47 |
債務超過額を上回る当期純利益を出すことで債務超過を解消する方法です。 債務超過額が5000万円であれば、単年で5000万円以上の当期純利益を出すことで債務超過が解消されます。
当期純利益を出すには、クラブの収入を増やすか、支出を減らすことが求められます。当期純利益による債務超過の解消は正攻法ですが、プロサッカークラブの経営には天候に左右される入場料収入や移籍金収入の有無、チーム人件費(特に勝利給)など不確実性の大きい要素が存在します。次の決算までに債務超過解消が必要となる状況ではややリスクが大きい手段と言えるでしょう。
2. 増資による解消 (資本金及び資本剰余金等を増やす)
年度 | 純資産 | 資本金 | 資本剰余金等 | 利益剰余金 | 当期純利益 |
---|---|---|---|---|---|
2013 | -28 | 126 | 196 | -350 | -87 |
2014 | 82 | 176 | 246 | -340 | 9 |
差分 | 110 | 50 | 50 | 10 |
債務超過額を上回る増資によって債務超過を解消する方法です。
債務超過額が5000万円であれば、年度内に合計5000万円以上の増資を実施することで債務超過が解消されます。
増資を実施すると発行済株式総数が増えるため、1株当たりの価値が下がります。第三者割当増資の引受先が新規株主である場合は、既存株主の保有比率が下がるため、増資の実施には既存株主の理解が不可欠です。勿論、既存株主が第三者割当増資の引受先となることも可能です。
増資による債務超過解消は、増資の引受先と既存株主の理解というハードルを乗り越えられさえすれば、不確実性を伴う当期純利益による手段に比べて、確実性が高い手段であると言えます。クラブライセンス制度による債務超過の禁止の初年度である2014年度決算では、増資によって債務超過を解消した事例が多く見られます。
増資を債務超過解消の手段として説明してきましたが、増資は資本の強化や資金調達の手段として一般に広く実施されています。
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