営業費用について
営業費用とは、企業の営業活動によって生じた費用です。
一般的な企業は、費用(原材料費や労働投入量)によって収入が決まる経営モデルですが、プロスポーツクラブの経営は、収入の見込みに対して費用、特にチーム人件費を決定していくという経営モデルです。
営業費用の項目
プロスポーツクラブの営業費用の内訳は以下の通りです。
- 売上原価
- チーム人件費: 選手と指導者の報酬の総額、移籍金など
- 試合関連費用: スタジアム使用料、警備費、運営設営費など
- トップチーム運営費用: 移動関連費、施設関連費、寮関連費、代理人手数料など
- 物販関連費用: グッズの原価
- アカデミー運営経費: アカデミーの移動関連費、施設関連費など
- 女子チーム運営経費: 女子チームの移動関連費、施設関連費な ど
- その他売上原価: 上記に当てはまらない売上原価
- 販売費および一般管理費: クラブの運営する上で売上に関係なくかかる費用
チーム人件費
チーム人件費は選手・スタッフの報酬および移籍金支出の総額です。
なおこの項目は2022年度決算の発表からトップチーム人件費となり、トップチームの選手・スタッフの報酬(インセンティブ含む)と移籍金支出に限定されています。
2021年度までのチーム人件費には指導者やスクールスタッフ、女子チームの選手・スタッフの報酬や移籍金も含まれていました。したがって2021年度までのチーム人件費のクラブ間比較には留意が必要です。
販売費および一般管理費
販売費および一般管理費は売上と関係なく掛かる費用です。一般に、営業費用は「売上原価」と「販売費および一般管理費」に分けられます。
- 一般管理費: 労務費、各種賃借料、業務委託費、Jリーグ年会費ほか
- 試合関連経費以外のスタジアム運営関係費: チケット手数料、広告宣伝費、協会納付金、イベント費ほか
- 広告料関係費: バーター取引相当分、広告代理店手数料、業務委託費ほか
- ホームタウン関係費用: ホームタウン活動費など
営業費用の分類の変化
Jクラブ経営情報開示資料では開示される項目が変化しています。
2005年度の開示では3項目で発表されていた営業費用は、2019年度の開示では7項目になっています。
2005年度〜2010年度
- 事業費 (チーム人件費+試合関連経費+トップチーム運営経費+アカデミー運営経費+女子チーム運営経費+物販関連経費+販売費)
- 事業費のうちチーム人件費
- 一般管理費
「一般管理費」とセットにされることが多い「販売費」ですが、2010年度「一般管理費」と2011年度「販売費および一般管理費」の数 値の比較から販売費は「事業費」に含まれていると推測しました。
2011年度〜2015年度
- チーム人件費
- 試合関連経費
- トップチーム運営経費
- アカデミー運営経費
- 女子チーム運営経費
- 販売費および一般管理費 (物販関連経費+その他売上原価+販売費+一般管理費)
売上原価である「物販関連経費」や「その他売上原価」が、売上原価に含まれない「販売費および一般管理費」に含まれているところは注意です。
2016年度〜
- チーム人件費
- 試合関連経費
- トップチーム運営経費
- アカデミー運営経費
- 女子チーム運営経費
- 物販関連経費
- 販売費および一般管理費 (その他売上原価+販売費+一般管理費)
2016年度からは物販関連経費が販売費および一般管理費から独立しました。
2022年度〜
- 売上原価
- トップチーム人件費
- 試合関連経費
- トップチーム運営経費
- アカデミー運営経費
- 女子チーム運営経費
- 物販関連経費
- その他売上原価
- 販売費および一般管理費 (販売費+一般管理費)
2022年度から営業費用は売上原価と販売費および一般管理費に分類されています。営業費用の各項目は売上原価の内訳として今までと同じように表示されています。
また、チーム人件費がトップチーム人件費となり、それまで 含まれていたアカデミーや女子チームの人件費は除外されることになりました。
参考
- 経営情報の見方
- 損益計算書
- 貸借対照表
- 営業収入
- 営業費用
- 入場者数
- クラブライセンス関連