移籍金の計上方法

移籍金の計上方法

あるクラブが、他のクラブと契約途中である選手を獲得するとき移籍補償金(移籍金)が発生します。

3. 国内移籍

3-2 移籍補償金
  1. プロ選手がプロ選手として契約の期間満了前に移籍する場合、移籍元クラブは移籍先クラブに移籍補償金を請求することができる。
  2. 移籍補償金の金額は、移籍元クラブと移籍先クラブの合意によって決定する。

プロサッカー選手の契約、登録および移籍に関する規則

移籍金は、受け取る側は営業収入「その他収入」に計上し、払う側は営業費用「チーム人件費」に計上します。その具体的な会計処理について、東京ヴェルディ/ベレーザの強化部に所属するYuta Saito氏がnoteに記しているので紹介します。

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note.com

要約すると移籍金収入は所属最終年度の収入として一括で計上し、移籍金費用は選手の契約年数で分割して計上するという内容です。

移籍金収入

移籍金収入が所属最終年度の収入として一括で計上されるということは、シーズン終了後の冬の移籍で得られる移籍金収入が発生するのは年度末ということになります。となると、その移籍金収入を年度内に消化するのは難しいと言えるでしょう(これは大会賞金も同様です)。年度内に移籍金を伴う選手獲得の契約が成立したとしても、前述の通り費用として計上するのは次年度以降となります。消化せずに利益とするとその分法人税等が課されてしまいます。

したがって移籍金収入は不確実性が高く予算化することは難しい、と言えるでしょう。

移籍金が発生するのが決算期末直前であること、変動収入の比率が高いことを考えると、収支を均衡させることは難しい年度があり、単年度の黒字赤字にはこだわらず、債務超過にならぬよう資本の枠内で繰越欠損金を調整することで、皆様から頂いている貴重な運営資金を余すことなく使いたいと考えております。

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買取オプション付きの期限付き移籍の効用

Jリーグ所属選手が欧州移籍する際に、買取オプション付きの期限付き移籍という形式が取られることがあります。以前はこの方式を不思議に思っていたのですが、移籍金収入の計上の方法を知るとこの形式の効用が理解できます。

例えばある選手が2022年の12月に欧州に完全移籍した場合、移籍金収入は移籍元クラブの2022年度の収入に計上されます。これを2023年6月に完全移籍することを前提として2022年12月に期限付き移籍をする、とした場合、期限付き移籍料と夏の完全移籍で発生する移籍金収入は2023年の収入として計上することができます。移籍金収入の有無が前年冬の段階で判明していると、予算として見込むことが容易となります。

買取オプション付きの期限付き移籍という形式になる理由は様々あると思いますが、移籍金収入の確実性を高める方法として優れていると言えるでしょう。

移籍金費用

建物、機械、器具備品などの取得に要した費用を使用可能年数にわたって分割して計上する方法を減価償却と言います。例えばX年に総工費10億円でクラブハウスを建設した場合、耐用年数を50年とすると(X+1)年から(X+51)の50年間毎年2000万円の費用を計上します。ただしこれは会計処理の話であって、建設資金を50年に渡って分割して支払うという意味ではありません。

選手獲得に伴う移籍金費用も建物や備品と同様、選手の契約年数に応じて減価償却して計上する、ということです。

リンク

Yuta Saito Jクラブ強化部/元コンサル
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減価償却のあらまし
www.nta.go.jp
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