このページでは、Jクラブの経営を理解するために必要となる、会計の基本的な考え方を整理します。
ここで扱う内容は、会計そのものを体系的に学ぶことを目的とするものではありません。
各記事を読む際に、誤解が生じやすい前提をあらかじめ確認することを目的としています。
会計上の損益と資金の動きは一致しない
企業会計では、実際の現金の入出金ではなく、当該事業年度に発生した収益や費用を基準として損益を計上します。
この考え方は発生主義と呼ばれます。
そのため、以下のような状況が生じ得ます。
- 黒字であっても資金繰りが厳しい
- 赤字であっても手元資金には余裕がある
発生主義による収益・費用の計上
発生主義では、「いつ現金を受け取ったか」ではなく、いつサービスや権利の提供が行われたかを基準に収益や費用を認識します。
このため、収益の計上時期と入金の時期が異なることは珍しくありません。
チケット収入と前受金の考え方
Jリーグクラブの収益の中で、比較的イメージしやすい例がチケット収入です。
例えば、事業年度が始まる前に翌シーズンのチケットを販売した場合、代金は先に入金されます。
Jクラブの多くは、2月1日から翌年1月31日までを事業年度としているため、ここでは2月に開幕するシーズンのチケットを1月中に販売するケースを想定すると分かりやすいでしょう。
しかし、チケットを販売した時点では、まだ試合は開催されておらず、観戦というサービスの提供は完了していません。
このような場合、会計上は次のように処理されます。
- 1月中に販売したチケットの売上は、2月から始まる事業年度の収益として計上される
- 入金された現金は、資産として計上される
- 同時に、将来試合を開催する義務を負っているため、前受金として負債にも計上される
つまり、現金が増加しているにもかかわらず、負債も同時に増加するという状態になります。
移籍金収入と未収金の考え方
チケット収入と同様に、現金の入金時期と収益計上のタイミングが一致しない例として、移籍金収入も挙げられます。
選手の移籍によって発生する移籍金収入は、原則として選手が所属していた最終年度に収益として計上されます。
たとえ移籍金が分割払いであったり、期末時点で未払いであったとしても、
- 会計上は収益が計上される
- 未回収分は未収金(資産)として処理される
という形になります。
その結果、
- 当期純利益は計上されている
- しかし現金はまだ入っていない
という状況が生じることもあります。
Jクラブの経営情報を読み解くために
Jリーグクラブの経営状況は、決算公告やクラブライセンス判定、プレスリリースなど、さまざまな形で公開されています。
これらの情報を読み解く際に示される数値は、いずれも会計上のルールに基づいて作成されたものです。
以降の記事では、会計の考え方そのものを前提知識として求めるものではありませんが、知っておくことでJクラブの経営の仕組みや判断の背景を、より理解しやすくなります。