このページでは、財務基準における「3期連続赤字の禁止」の内容について確認します。
ただし、財務基準に関する特例措置により、現在は3期連続赤字のカウントが停止されています。具体的には、2027/28シーズンの年度からカウントが再開され、2029/30シーズンの年度が3期目となるため、「3期連続赤字の禁止」は当面の間、判定の対象とはなりません。
さて、クラブライセンス交付規則の財務基準F.01で規定されている「3期連続赤字の禁止」の内容を要約すると、以下の通りです。
- 前期の決算において3期連続赤字となった場合、次シーズンのJ3クラブライセンスは交付されません(財務基準F.01)
- 前期の決算において3期以上連続で赤字が続き、その最終年度の純損失額が純資産額を上回っている場合、次シーズンのクラブライセンスは交付されません(財務基準F.01)
1点目はいわゆる従来型の「3期連続赤字の禁止」ルールです。
2点目は、純資産が十分に大きい場合には3期以上連続の赤字を認めるという例外規定です。この規定は2018年の規則改正によってJ1・J2クラブを対象に新設され、2025年10月改正版のJ3クラブライセンス交付規則においても同様の内容が採用されました。
もっとも、前述の通り、現在は特例措置により「3期連続赤字の禁止」自体が審査対象外となっています。
また、当該事業年度の決算の見通しを審査対象とする財務基準F.06の内容を踏まえると、次の点も指摘できます。
- 今期の決算で3期連続赤字となる見通しが極めて高い場合、次シーズンのJ2クラブライセンスおよびJ3クラブライセンスは交付されません(財務基準F.06)
- 今期の決算で3期以上連続の赤字となり、かつ今期の純損失額が今期の純資産額を上回る見通しが極めて高い場合、次シーズンのクラブライセンスは交付されません(財務基準F.06)
以下では、これらの内容をクラブライセンス交付規則の原文によって確認します。
原文
新型コロナウイルスの影響による財務基準の特例措置が適用される以前、2019年度のJリーグクラブライセンス交付規則・運用細則から引用します。
引用終わり出典J1・J2クラブライセンス交付規則・運用細則 2019F.01 年次財務諸表(監査済み) A等級
3. 判定
(2) 提出された財務諸表に基づいて審査を行い、以下のいずれかに該当する場合は基準F.01を満たさないものとする。
- 3期以上連続で当期純損失を計上した場合
(ただし、ライセンスを申請した日の属する事業年度の前年度末日現在の純資産残高が、同前年度の当期純損失の額の絶対値を上回っている場合は、本項目に該当しないものとみなす)
3期以上連続で当期純損失を計上した場合、A等級である基準F.01を満たさず、クラブライセンスは交付されません。
括弧書きで示されている「ただし」以下の部分は、純資産が十分に大きい場合には3期以上連続の赤字を認めることを定めた例外規定です。
また、前ページで確認した通り、財務基準F.06により、当該事業年度の決算の見通しもライセンス判定の対象となります。
3期連続赤字の禁止ルールの改正
引用終わりただし、ライセンスを申請した日の属する事業年度の前年度末日現在の純資産残高が、ライセンスを申請した日の属する事業年度の前年度の当期純損失の額の絶対値を上回っている場合は本項目に該当しないものとみなす
この括弧書きの規定は、2018年の規則改正により追加されました。これは、純資産額が十分に大きいクラブについては、3期以上の連続赤字を許容するという趣旨の規定です。
3期連続赤字の禁止ルールの改定について
出典2018年度 クラブ経営情報開示(先行発表) メディア説明会 発言録新規タブで開きます先ほどFC琉球が3期連続赤字とご説明させていただきましたが、ライセンス施行の当初のルールでは、FC琉球はクラブライセンスが不交付という考え方がありますが、現行のルールに照らすと不交付にはなりません。
ルールの変更は、「3期以上連続で赤字が発生したとしても、連続赤字の最終年度における期末純資産残高が当該年度の赤字額の絶対値を上回っている場合は不交付としないこととする。」としています。
別紙のクラブ決算一覧を見ていただきますと、FC琉球の24行目が「2018年度の赤字額」になり、4,800万円になりますが、この数字が純資産に対してどうなのかということが今回基準に抵触するかしないかの判断になりますが、まず、2018年度の当期純利益の赤字は、琉球にとって3期目の赤字となります。このため、4,800万円の次に純資産が5,000万円とありますが、純資産5,000万円に対し、当期純利益の赤字が5,300万円となると、当期純利益赤字が純資産より上回ってしまいますが、今回は下回っているため、財務基準に抵触しないことになります。
クラブの予算の設定においては、前年対比が重要な要素になりますが、仮に昨年19年同じような営業成績、同じような営業費用の使い方をした場合、当然FC琉球は4,800万円の赤字が発生する場合があります。が、その場合であっても、期中に債務超過にならない水準、ポイントは何かと申しますと、クラブライセンスの財務基準に定められているクラブの健全な経営状態を維持して成長することです。
同じ赤字が仮に今シーズン発生した場合、債務超過にならない水準ということで、前期末純資産が前期末当期純損失(赤字)を絶対値で上回っていればライセンスは交付するという基準を設定しました。仮に2019年も赤字が4,800万円出ると、純資産が200万円まで減ってしまうことになりますが、期中に債務超過にならない(試合の運営等に影響等は及ぼさない)ということで、このような基準とさせていただきました。
もちろん理論上の話であり前提が損なわれればうまくいかなくなることは承知の上ですが、基本的にはルール上はそうした設定で考えさせていただきました。
これによって新改定案のメリットとしては
①内部留保を活用した大規模投資がしやすくなる
②純資産に余裕がある状況下では、予測出来ない費用を意識した緊縮予算を組む必要が無くなる
③少額赤字を気にせず、収支均衡を目指しやすくなるこうしたメリットを期待してルールを改定させていただいた次第です。
琉球はそうしたメリットを享受できる体制になっていただきたいと思っておりまが、全体の営業収益の金額と比べると赤字額が大きく、油断できない状況ですので、引き続き経営努力を求めたいと考えています。
改正当初はJ1・J2クラブライセンスの判定にのみ適用されていましたが、2025年10月改正版のJ3クラブライセンス交付規則にも同様の文言が追加され、現在ではJ1からJ3まで全てのクラブライセンスに適用されています。
例
2019年に実施されるライセンス申請を例に考えます。この場合、括弧書きの規定は以下のように整理できます。
- ライセンスを申請した日の属する事業年度:2019年度
- その前年度:2018年度
- 前年度末日現在の純資産残高:2018年度決算の純資産額
- 前年度の当期純損失の額の絶対値:2018年度決算の当期純損失
3が4を上回っている場合は、3期以上連続の赤字であっても基準を満たすことになります。したがって、2018年度決算における純資産額と当期純損失額を比較します。
| 決算年度 | 2016 | 2017 | 2018 |
|---|---|---|---|
| 純資産額 | 295 | 195 | 95 |
| 当期純利益 | 50 | -100 | -100 |
→ ✅ 3期連続赤字ではない (2020シーズンのクラブライセンスは交付される)
| 決算年度 | 2016 | 2017 | 2018 |
|---|---|---|---|
| 純資産額 | 1200 | 1100 | 1000 |
| 当期純利益 | -100 | -100 | -100 |
→ ✅ 3期連続赤字だが、純資産額が当期純損失の絶対値を上回る (2020シーズンのクラブライセンスは交付される)
| 決算年度 | 2016 | 2017 | 2018 |
|---|---|---|---|
| 純資産額 | 295 | 195 | 95 |
| 当期純利益 | -100 | -100 | -100 |
→ ❌ 3期連続赤字で、純資産額が当期純損失の絶対値を下回る (2020年シーズンのクラブライセンスは交付されない)
特例措置による停止
2020年の新型コロナウイルス感染拡大以降、クラブライセンス制度では財務基準に関する特例措置が継続的に設けられてきました。コロナ禍を理由とする特例措置により、2020年度および2021年度は「3期連続赤字の禁止」のカウント対象外とされました。さらに、配分金改革に伴う特例措置によって2023年度もカウント対象外となっています。
2024年度および2025年度はカウント対象とされましたが、2026年夏のシーズン移行に伴い、2026年の特別シーズンに該当する年度および2026/27シーズンも、改めてカウント対象外となりました。
この結果、「3期連続赤字の禁止」のカウント対象となる連続した3期は、2027/28シーズンの年度から2029/30シーズンの年度となります。2020年以降、約10年間にわたり、複数回の特例措置によって「3期連続赤字の禁止」は実質的に適用外となっています。