2022年04月26日
アビスパ福岡が2021年度決算を発表
アビスパ福岡を運営するアビスパ福岡株式会社は2022年4月26日、2021年度の決算を発表しました。
主な指標
項目 | 数値 | 前年比 |
---|---|---|
営業収入 | 21.32億円 | 5.94億円 |
営業利益 | ▲4.82億円 | 1.95億円 |
経常利益 | ▲5.02億円 | 2.18億円 |
当期純利益 | ▲5.05億円 | 2.18億円 |
純資産 | ▲3.54億円 | 1.37億円 |
動画 10:38〜
川森社長「今期は5億500万円の当期純損失での、3億5400万円の債務超過になっておりますので…」
背景
アビスパ福岡は2020年度決算において、2.87億円の当期純損失を計上したため、純資産が-2.17億円と債務超過の状態になりました。通常、決算時に債務超過であったクラブには次々年度のJリーグクラブライセンスは交付されませんが、新型コロナウイルスの影響による財務基準の特例措置により、2020年度決算、2021年度決算において新たに債務超過になることが認められています。
アビスパ福岡は債務超過解消のため、2021年4月27日にDMM.comを引受先とする第三者割当増資を実施しています。出資額は非公表ですが、報道によるとこの増資によって一旦は債務超過を解消していたようです。
2021年度決算 損益計算書 (抜粋)
(単位: 百万円) | 営業収入 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 |
---|---|---|---|---|
2019決算 | 1577 | -103 | -107 | -107 |
2020決算 | 1538 | -287 | -284 | -287 |
2021決算 | 2132 | -482 | -502 | -505 |
前年比 | 594 | 195 | 218 | 218 |
収支のバランス
J1昇格初年度となったため、営業収入は大幅な増収となりましたが、同時にJ1で戦うためのトップチームへの投資など、営業費用も増大し、コロナ禍初年度である2020年度決算よりも、大きくバランスを崩す結果となりました。
ただし、クラブライセンス判定の財務基準の特例措置によって、2021年度決算では債務超過額の増加が認められています。降格4枠というシーズンを今後数年間の収入から前借りする形で乗り越えることは、経営戦略上の一つの選択肢であると言えます。
コロナ禍以前の水準との比較
2021年度はJ1昇格によるクラブ規模の拡大があったため、コロナ禍以前の2019年度よりも営業収入、営業費用ともに大きくなっています。
2021年度決算 貸借対照表 純資産の部 (推定)
(単位: 百万円) | 純資産 | 資本金 | 資本剰余金等 | 利益剰余金 |
---|---|---|---|---|
2019決算 | 69 | 176 | 246 | -353 |
2020決算 | -217 | 176 | 246 | -640 |
2021決算 | -354 | 360 | 430 | -1145 |
前年比 | 137 | 184 | 184 | 505 |
今回のプレスリリースでは貸借対照表は公開されていません。そのため実際の数値は不明ですが、前述した第三者割当増資の内容、当期純損失、クラブ概要に掲載されている資本金から推理することは可能です。したがって、実際の数値と異なる可能性があります。ご了承ください。
前述の通り、川森社長によるYouTubeの配信の中で債務超過の額が3億5400万円であることが明かされました。これを基に、2021年に実施した増資の内容を推察します。
2021年の第三者割当増資 (推定)
(単位: 百万円) | 純資産 | 資本金 | 資本剰余金等 | 利益剰余金 |
---|---|---|---|---|
2020決算 | -217 | 176 | 246 | -640 |
増資後 | 150 | 360 | 430 | -640 |
差分 | 367 | 184 | 184 | 0 |
アビスパ福岡は、2021年4月にDMM.comを引受先とする第三者割当増資を実施しました。
アビスパ福岡の会社概要には、資本金(2022年4月27日現在)は3億6009万円と記されています。Jリーグ発表の2020年度決算における資本金は1.76億円であるため、これは増資後の数値であることがわかります。
増資の引受額のうち、1/2を上限として資本剰余金等に計上することができます。アビスパ福岡が過去に実施した増資でも、引受額の1/2を資本剰余金等に計上しています。したがって、第三者割当増資の引受額を3.67億円、うち1/2の1.84億円を資本剰余金等に計上していると推定します。
増資後の純資産は、2020年度決算の-2.17億円に3.67億円を加えた1.50億円となります。これは一時的に債務超過を脱していたという報道とも合致します。
(単位: 百万円) | 純資産 | 資本金 | 資本剰余金等 | 利益剰余金 |
---|---|---|---|---|
2020決算 | -217 | 176 | 246 | -640 |
増資後 | 150 | 360 | 430 | -640 |
2021決算 | -354 | 360 | 430 | -1145 |
以上の表が、2020年度決算から第三者割当増資、2021年度決算に至るまでの純資産の部の動きとなります。増資後の純資産は1億5000万円。これに2021年度決算の当期純利益-5億500万円を加えた、-3.54億円が2021年度決算の純資産になります。(百万円単位で記載しているため、端数処理によって1の位の数値が一致しない場合があります)
債務超過の解消に向けて
アビスパ福岡は2024年度決算(2025年1月末)までに3.54億円の債務超過を解消する必要があります。また、2022年度決算、2023年度決算では猶予期間として債務超過であることが認められていますが、債務超過額が増加することは認められていません。したがって、債務超過を解消するまでは、(増資をしない場合)確実に黒字決算であることが求められます。また、2022年度から2024年度の3年間で債務超過を解消するには、単純計算で年間1.2億円の当期純利益を出す必要があります。
■基準未充足となった場合の取扱い
上記の財務基準未充足となった場合には、J1・J2クラブは次シーズン下位リーグ所属、J3クラブは次シーズン勝点10点減とする。
上記のルールに抵触した場合、決算年度の次々シーズンは、決算年度の次シーズンの所属カテゴリの直下のリーグに成績に関わらず降格という制裁が行われます。
例えば、2023年1月末に行われる2022年度決算において債務超過額が増加してしまった場合は、2023年シーズンは従来通りのカテゴリに所属できますが、2024年シーズンは成績に関わらず直下のカテゴリに所属することになります。
リンク
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