2022年04月23日
サガン鳥栖が2021年度決算を発表
サガン鳥栖を運営する株式会社サガン・ドリームスは2022年4月23日、2021年度の決算を発表しました。
主な指標
項目 | 数値 | 前年比 |
---|---|---|
営業収入 | 22.68億円 | 6.18億円 |
経常利益 | ▲1.71億円 | 4.28億円 |
当期純利益 | ▲2.21億円 | 4.94億円 |
純資産 | ▲4.64億円 | 2.28億円 |
背景
サガン鳥栖は、2019年度に収支のバランスを大きく崩し、約20億円の当期純損失を計上しています。2018年度決算の純資産は3600万円だったので、債務超過になる可能性がありましたが、年度内に実施した20億円規模の増資によって債務超過化を免れています。
2020年度は営業費用の大幅なスケールダウンを実施したものの、新型コロナウイルスの流行の影響により、営業収入も低下。約7億円の当期純損失を計上し、純資産が-6.93億円と債務超過に陥ってしまいました。
通常、決算時に債務超過であったクラブには、次々年度(この場合は2022年シーズン)のクラブライセンスが公布されませんが、新型コロナウイルスの流行に伴うクラブライセンス制度・財務基準の特例措置により、2023年度決算までは債務超過が認められています。
2023年度決算までを対象とした財務基準の特例措置を端的に表すと、以下のような内容になっています。
2020年度決算、2021年度決算は特例措置として以下のルールが適用されます。
- 新たに債務超過になってもよい
2022年度決算、2023年度決算は猶予期間として以下のルールが適用されます。
- 新たに債務超過になってはいけない
- 債務超過が解消されていなくてもよいが、前年度より債務超過額が増加してはいけない
上記のルールに抵触した場合、下位リーグに降格となります。
2022年シーズン鳥栖がJ1に残留する前提で具体例をあげます。鳥栖が2022年度決算(2023年1月末)で債務超過額が増加してしまった場合、2023年シーズンはJ1リ ーグに参加できますが、2024年シーズンは成績に関わらずJ2リーグ所属となります。
クラブライセンス判定における財務基準の特例措置は2023年度決算までを対象とし、2024年度決算からは元の基準に戻ります。したがって、債務超過のクラブは2024年度決算までに、1月末決算であれば、2025年1月末までに債務超過を解消する必要があります。
2021年度決算 損益計算書
(単位: 千円) | 営業収入 | 経常利益 | 当期純利益 |
---|---|---|---|
2019決算 | 2,561,604 | -2,013,810 | -2,014,869 |
2020 決算 | 1,649,450 | -598,877 | -715,135 |
2021決算 | 2,267,578 | -170,697 | -220,939 |
前年比 | 618,128 | 428,180 | 494,196 |
収支のバランス
営業収入が大幅に増加したものの、営業費用も微増しているため、約2億2094万円の当期純損失を計上しています。収支のバランスは、大幅に崩れた2019年度からは改善されつつあります。
しかしながら、前述の通り2022年度決算からは債務超過額の増加が認められません。ということは、2022年度決算では(増資をしない前提で)赤字が許されない状態です。
さらに、後述する4.64億円の債務超過を2024年度決算までに解消する必要があります。単純計算で、1年あたり1.5億円以上の黒字を出さなければなりません。
コロナ禍以前の水準との比較
コロナ禍の影響を受けていない2019年度の営業収入と比較すると、約3億円の開きがあります。広告料収入と入場料収入で約5億円の開きがありますが、移籍金収入などが含まれるその他収入の項目では2019年を約2億円ほど上回っています。
2021年度決算 貸借対照表 純資産の部
(単位: 百万円) | 純資産 | 資本金 | 資本剰余金等 | 利益剰余金 | (当期純利益) |
---|---|---|---|---|---|
2019決算 | 21 | 2189 | 2039 | -4207 | -2014 |
2020決算 | -693 | 2189 | 2039 | -4923 | -715 |
2021決算 | -464 | 394 | 225 | -1084 | -221 |
前年比 | 229 | 1795 | 1814 | 3839 | 494 |
サガン鳥栖の2021年度決算における純資産は-4億6402万円です。依然、債務超過の状態が続いています。
2021年の減資及び増資
サガン鳥栖は2021年度内に減資及び増資を実施しています。
<重要な資金調達の状況>
弊社は、令和3年7月23日に、第三者割り当てにより450,540千円の増資を実施いたしました。
昨年6月の報道では増資の額は5.5億円とされていましたが、今回の決算報告内で4.5億円(450,540千円)であることが明記されています。
2021年6月の減資 (推定)
(単位: 百万円) | 純資産 | 資本金 | 資本剰余金等 | 利益剰余金 |
---|---|---|---|---|
2020決算 | -693 | 2189 | 2039 | -4923 |
減資後 | -693 | 169 | 0 | -864 |
差分 | 0 | 2020 | 2039 | 4059 |
第三者割当増資の額が4.5億円、増資後の資本金が3.94億円という情報から逆算して推定しています。
減資とは資本金の減少分を他の項目に振り替える会計処理であるため、減資によって純資産は変動しません。資本金、資本剰余金をそれぞれ約20億円減らし、利益剰余金のマイナス分を補填しています。
2021年7月の第三者割当増資 (推定)
(単位: 百万円) | 純資産 | 資本金 | 資本剰余金等 | 利益剰余金 |
---|---|---|---|---|
2020決算 | -693 | 2189 | 2039 | -4923 |
減資後 | -693 | 169 | 0 | -864 |
増資後 | -244 | 394 | 225 | -864 |
差分 | 449 | 225 | 225 | 0 |
プレスリリースにある通り、第三者割当増資の額は4.5億円です。したがって、増資による純資産の増加分も4.5億円になります。そのうち1/2に当たる2.25億円を資本剰余金に計上していると推定しています。
減資及び増資から2021年度決算までの各項目の流れ
(単位: 百万円) | 純資産 | 資本金 | 資本剰余金等 | 利益剰余金 |
---|---|---|---|---|
2020決算 | -693 | 2189 | 2039 | -4923 |
減資後 | -693 | 169 | 0 | -864 |
増資後 | -244 | 394 | 225 | -864 |
2021決算 | -464 | 394 | 225 | -1084 |
2020年度決算から2021年に実施した減資及び増資、そして2021年度決算までの純資産の部の流れは以上のようになります。増資後の純資産-2.44億円に、2021年度の当期純利益-2.2億円を加えた-4.64億円が2021年度決算における純資産となります。
債務超過の解消に向けて
前述の通り、クラブライセンス制度の財務基準における特例措置は2023年度決算までを対象としているため、2024年度決算までには債務超過を解消しなければなりません。したがって、4.64億円の債務超過を2022年度から2024年度の3年間で必ず解消しなくてはいけません。
また2022年度は特例措置の猶予期間となるため、「債務超過額が増加してはいけない」という制約がつくことになります。
リンク
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