2024年07月30日
【2023年度】債務超過額が増加したクラブ、新たに債務超過に陥ったクラブ
Jリーグは2024年7月30日、2023年度のJクラブ経営情報開示資料の本発表版を公表しました。
2023年度決 算では、2022年度決算で債務超過の状態であった6クラブのうち、2クラブが債務超過額を増加させており、また3クラブが新たに債務超過に陥っています。
財務基準における特例措置のスケジュール改定により2023年度決算は債務超過額の増加と新たに債務超過に陥ることが認められる特例措置の対象となっていることから、この結果による次シーズンのクラブライセンス判定への影響はありません。
2023年度決算におけるクラブの動向
状態 | 数 | クラブ |
---|---|---|
債務超過解消 | 2 | 柏、C大阪 |
債務超過額減少 | 2 | 鳥栖、東京V |
債務超過額増加 | 2 | 福岡、鳥取 |
新たに債務超過化 | 3 | 横浜FC、YS横浜、相模原 |
債務超過額が増加したクラブ
アビスパ福岡、ガイナーレ鳥取の2クラブ
アビスパ福岡
項目 | 数値 | 前年比 |
---|---|---|
2022年度決算の純資産額 | ▲3億3300万円 | |
2023年度決算の純資産額 | ▲3億9900万円 | 6600万円 |
2023年度の純利益 | ▲8900万円 | |
2023年度内の増資額 | 2300万円 | |
(参考)2023年度の売上高 | 28億7400万円 |
アビスパ福岡は債務超過解消に向けて増資の実施を検討しているようです。
ガイナーレ鳥取
項目 | 数値 | 前年比 |
---|---|---|
2022年度決算の純資産額 | ▲2億3600万円 | |
2023年度決算の純資産額 | ▲3億0400万円 | 6800万円 |
2023年度の純利益 | ▲6800万円 | |
(参考)2023年度の売上高 | 4億6900万円 |
ガイナーレ鳥取は債務超過解消に向けて増資の実施を検討しているようです。
新たに債務超過に陥ったクラブ
横浜FC、Y.S.C.C.横浜、SC相模原の3クラブ
横浜FC
項目 | 数値 | 前年比 |
---|---|---|
2022年度決算の純資産額 | 1億7200万円 | |
2023年度決算の純資産額 | ▲1億7200万円 | 3億3400万円 |
2023年度の純利益 | ▲3億3400万円 | |
(参考)2023年度の売上高 | 36億2700万円 |
Y.S.C.C.横浜
項目 | 数値 | 前年比 |
---|---|---|
2022年度決算の純資産額 | 100万円 | |
2023年度決算の純資産額 | ▲8300万円 | 8400万円 |
2023年度の純利益 | ▲9600万円 | |
2023年度内の増資額 | 1200万円 | |
(参考)2023年度の売上高 | 2億0900万円 |
Y.S.C.Cは2023年10月にバルセロナに拠点を置く企業Never Say Never(NSN)と資本提携を行うことが報じられていましたが、2024年5月の時点で続報はありません。Y.S.C.C.は貸借対照表から2023年度内に1200万円規模の増資を実施していることが分かっていますが、これがNSNとの資本提携を指しているのかどうかは不明です。
SC相模原
項目 | 数値 | 前年比 |
---|---|---|
2022年度決算の純資産額 | 5800万円 | |
2023年度決算の純資産額 | ▲5億2000万円 | 5億7800万円 |
2023年度の純利益 | ▲5億7700万円 | |
(参考)2023年度の売上高 | 4億8600万円 |
追記: メディアブリーフィング発言録より
2024年5月30日にJリーグによる経営情報開示メディアブリーフィング発言録が公開されました。発言録によると、親会社からの支援が決定しているクラブなどがあることから、2023年度決算時に債務超過の状態であっても資金繰りの懸念や大きなリスクを抱えているクラブはない、と明言されています。
今年も一部債務超過のクラブもありま すが、親会社からの支援が中期的には決まっている状況などですので、特に現時点で資金繰りの懸念や大きなリスクを抱えているクラブはございません。しかしながら、先ほどご説明したように、財務基準上は25年末までに債務超過を解消しなければならないので、当期の利益で解消していくのか、資本金を増やす意味での増収を実行するのか、各クラブと綿密にコミュニケーションをとりながら、このような形で解消していく見通しです。
クラブライセンス制度の財務基準について
Jリーグクラブライセンス制度の財務基準ではJクラブが債務超過に陥ることを禁止していますが、新型コロナウイルスの影響により時限的に債務超過を認める特例が設けられています。特例には特例措置と猶予期間の2段階があり内容は以下の通りになります。
特例措置
- 債務超過、3期連続赤字をライセンス交付の判定対象としない
- 対象年度に新たに債務超過に陥っても判定対象としない
2020年度決算、2021年度決算、2023年度決算が対象
当初は2020年度決算、2021年度決算が対象
猶予期間
- 債務超過が解消されていなくてもよいが、前年度より債務超過額が増加してはいけない
- 新たに債務超過に陥ってはいけない
- 3期連続赤字のカウントをスタートする
2022年度決算、2024年度決算が対象
当初は2022年度決算、2023年度決算が対象。2023年度決算は特例措置に変更、新たに2024年度決算も猶予期間の対象に。
特例措置なし
- 債務超過が解消されていなければならない
- 赤字が継続しているクラブは、3期連続赤字に抵触する可能性がある
2025年度決算から特例措置なし
当初は2024年度決算から特例措置なし。2024年度決算は猶予期間に変更。
2023年の均等配分金減額の影響を受け当初のスケジュールが改定されています。債務超過解消の期限は当初の2024年度末から2025年度末に一年延長しています。
2024年度決算は猶予期間であり、債務超過額が増加すること、新たに債務超過に陥ることが禁止されています。
2024年度内に行われる2025シーズンのクラブライセンス審査では、進行中の2024年度決算において、債務超過額が増加しないこと、新たに債務超過に陥る可能性がないことを合理的に示す必要があります(財務基準F.06)。
この基準を未充足となった場合、J1・J2クラブの場合は翌シーズン下位カテゴリに降格、J3クラブの場合は勝ち点10減の制裁が科されます。