2024年05月02日
カマタマーレ讃岐が2023年度決算を発表
カマタマーレ讃岐を運営する株式会社カマタマーレ讃岐は2024年5月2日、2023年度決算(自2023年2月1日、至2024年1月31日)を発表しました。
主な指標
項目 | 数値 | 前年比 |
---|---|---|
売上高(営業収入) | 4億2300万円 | 1700万円 |
営業利益 | ▲9100万円 | 5200万円 |
経常利益 | ▲8800万円 | 4600万円 |
当期純利益 | 5100万円 | 9400万円 |
純資産額 | 1億0500万円 | 5100万円 |
今回発表されたのは損益計算書とその内訳及び貸借対照表です。
カマタマーレ讃岐の2023年度の売上高は4億2300万円。前年比1700万円の微増となりましたが、プレスリリースから当初の計画では売上高を4億4800万円としていたこと、その目標額が未達であったことが判明しています。
一方で費用面では当初予算を3300万円上回ったことが明らかになっています。その結果、9100万円という比較的大きな営業損失を計上することとなりました。
【2023年度決算について】
初めに2023年度(2024年1月期)の計画を振返ります。収入面では営業努力による増収+42百万円(前年度比)を計画する一方で、経費面では試合数増加による事業関連の経費増と、日本フットボールリーグ(JFL)への降格を絶対回避するためのチーム強化費およびトップチーム運営経費を織り込み、全体で+36百万円の経費増(前年度比)を計画していました。この収入計画および経費計画により、営業損益ベースで▲34百万円の計画でした。
この計画に対して、2023年度の実績として、増収が前年度比+17百万円(計画比▲25百万円)にとどまり、また全体経費が前年度比+69百万円(計画比+33百万円)となったことから、▲91百万円の営業損失(計画比▲57百万円)となりました。
その一方で、三豊市との連携協定に基づく「宝山湖ボールパーク夢いっぱいプロジェクト」における企業版ふるさと納税の寄附金1億4000万円を特別利益として計上したため、最終的な損益は5100万円の黒字となっています。その結果、2023年度決算の純資産額は1億0500万円となりました。
当初計画では後述するクラブハウス建設費の圧縮記帳と4000万円の赤字予算によって、期末の純資産額を1300万円にする予算立てを行っていました。しかしながら、建設費の圧縮記帳は行わない方針転換により、特別利益に計上した寄附金による黒字化と純資産額の増加という決算の内容になっています。
一方で、三豊市との連携協定に基づく「宝山湖ボールパーク夢いっぱいプロジェクト」は、計画通り遂行し、三豊市が整備する天然芝グラウンド2面と、当クラブが整備するクラブハウスが2023年10月に完成しました。地方創生拠点施設として活用されるクラブハウスの建設には、三豊市の企業版ふるさと納税の仕組みを活用させていただき、たくさんの企業の皆様に拠出いただいた寄付金140百万円を建設財源に充てました。当該取引に係る会計処理として、特別利益140百万円が計上された結果、最終の当期純損益は51百万円のプラスとなり、貸借対照表の純資産も105百万円(前年度比+51百万円)となりました。
2024年度の予算については、売上高を4億8000万円、クラブハウス2期工事による企業版ふるさと納税の特別利益を5500万円、特別利益を含めた最終損益の黒字化、つまり経常損失5500万円以内を目標とすることが宣言されています。
【2024年度の計画について】
2024年度(2025年1月期)は、引き続きクラブハウス2期工事による企業版ふるさと納税の募集を進め、当該取引に係る特別利益55百万円を計画し、これを織り込んだ最終の当期純損益の黒字化をめざします。当期純損益の黒字化には、経常損益ベースで▲55百万円の赤字にとどめる必要があり、経常損益を前年度比+33百万円改善する必要があります。
この点に関して、収入面では、広告料収入で前年度比+21百万円、入場料収入およびその他事業収入で同+39百万円の増収を計画しており、全体では同+57百万円の増収を計画しております。
これに対して、費用面では、チーム強化費が前年度比+15百万円、遠征活動の拡大によるアカデミー関連経費が同+8百万円、また事業体制強化のためのフロント人件費増、宝山湖ボールパークの通年稼働による費用増などを含む販売費および一般管理費が同+33百万円となる一方で、練習場賃借料や備品購入費の抑制などによるトップチーム運営経費が同▲24百万円、その他事業費の抑制により同▲4百万円の経費削減に取り組み、これらの増収計画と経費計画をあわせて、経常損益ベースで前年度比+33百万円の収支改善を果たします。
宝山湖ボールパーク夢いっぱいプロジェクト
宝山湖ボールパーク夢いっぱいプロジェクトは2021年12月にカマタマーレ讃岐と香川県三豊市が締結した「三豊市宝山湖公園におけるスポーツを核とする地域活性化に関する協定」に伴い、宝山湖公園に天然芝グラウンド2面、人工芝グラウンド1面、多目的グラウンド1面及びJ1クラブライセンスに適合するクラブハウスの整備を行うプロジェクトです。
プロジェクトは以下の2つの事業によって構成されています。
- 宝山湖公園グラウンド整備事業 (2022年度〜2023年度、三豊市)
- クラブハウス(地方創生拠点)整備事業 (2023年度、カマタマーレ讃岐)
このうち2のクラブハウス整備事業については、企業版ふるさと納税の制度を活用してカマタマーレ讃岐が事業主体となり建設を行いました。
これは個人的に企業版ふるさと納税について誤解していた点なのですが、企業版ふるさと納税の対 象となる地方創生プロジェクトの事業主体は必ずしも地方公共団体である必要はない、ということが今回の決算公告で理解しました。
企業版ふるさと納税概要
平成28年度に創設された企業版ふるさと納税は、国が認定した地域再生計画に位置付けられる地方公共団体の地方創生プロジェクトに対して企業が寄附を行った場合に、法人関係税から税額控除する仕組みです。
損金算入による軽減効果(寄附額の約3割)と合わせて、令和2年度税制改正により拡充された税額控除(寄附額の最大6割)により、最大で寄附額の約9割が軽減され、実質的な企業の負担が約1割まで圧縮さ れます。
以前の記事では、カマタマーレ讃岐が企業版ふるさと納税を「する」側(寄附法人)であり、クラブハウス建設は三豊市が事業主体である、という内容を書いていました。
しかしながら実際には、三豊市が企業版ふるさと納税の受け皿となり、地方創生プロジェクトである「宝山湖ボールパーク夢いっぱいプロジェクト」内の「クラブハウス(地方創生拠点)整備」の事業主体であるカマタマーレ讃岐へその資金を拠出、この資金と増資で集めた自己資金を使ってカマタマーレ讃岐がクラブハウスを整備、という図式であったようです。
見逃していた(申し訳ありません!)2022年度決算公告(2023年5月発表)の中にも同様の内容が記されています。
今期、同協定に基づく地方創生拠点施設であるクラブハウスの建設に着手します。工事は 1 期工事及び 2 期工事にわかれており、1 期工事は本年 4 月から開始し、同 9 月に完成します。三豊市が整備する天然芝グラウンドの養生が整う 10 月から、1 期工事完了のクラブハウスとグラウンド全体が使用可能となります。このクラブハウスはJ1ク ラブライセンスの施設基準に準拠しており、1 期工事の工事費は 187 百万円(消費税抜き)です。このクラブハウスは、当クラブの練習施設として使用するとともに、地方創生拠点施設として一般の方にも利用されることから、当社が工事会社に支払う工事代金分は、三豊市の企業版ふるさと納税基金から、その時点で払い込まれている金額を上限として当社に補助金が交付されます。企業版ふるさと納税の募集金額は、3 月 31 日現在、払込済分と確約分をあわせて 127 百万円となっており、1 期工事の代金には 60 百万円不足する状況にあります。そのため、今後、企業版ふるさと納税のさらなる募集に取り組みます。加えて、クラブハウス完成のタイミングで不足金が生ずる場合に備え、不足する工事代金の支払いを 2 年間猶予するとの約定を工事会社との間で交わしております。本プロジェクトの企業版ふるさと納税の募集期間は、行政年度の令和6年度末(2025 年 3 月末)まで設定されていることから、令和6年度に行うクラブハウス 2 期工事とその他付帯施設の工事代金を含めた不足金額分の企業版ふるさと納税の募集を引き続き行います。
なお2022年度の決算公告では、クラブハウス建設に対する企業版ふるさと納税による寄附金を営業外収益に、建設費用の一部(寄附金と同額)を営業外費用として圧 縮記帳することが記されていましたが、今回の発表では寄付金は特別利益に計上、そしてクラブハウス建設に関する営業外費用は発生していないことから方針の転換がなされたものと思われます。
なお、補助金の交付を受けて工事代金を支払うクラブハウス建設に係る取引は、受領する補助金が営業外収益で計上される一方で、取得する建物が圧縮記帳され同額の営業外損失が計上されることから、減価償却費も発生せず、損益計算上、影響を与えません。
圧縮記帳とは
圧縮記帳とは、本来は課税所得となる利益を将来に繰り延べる制度で、法人税法と租税特別措置法に規定されています。
例えば、特定の機械を購入するにあたり、国から補助金が給付されたとします。そして、その補助金を予定どおり機械購入に充当したとします。機械は耐用年数で減価償却します。
すると、機械を取得した初年度の課税所得はどうなるでしょうか?
補助金収入は法人税上益金となりますから、 課税所得はグンと増えます。そして、損金としては減価償却費となると、初年度における課税所得は高くなります。せっかく補助金はもらえたのに、初年度の税金が大きいと補助金の効果は減ります。
そこで考えられたのが圧縮記帳です。
圧縮記帳は、受け取った補助金にも課税しますが、「補助金を受取った事業年度の」課税を避ける方法です。したがって、トータルで考えれば支払うべき税金は同じですが、ある程度の補助金の効果が認められます。
圧縮記帳という手法により、固定資産の取得価額を減額すると、減価償却費も少なくなります。
上の図で1年目は圧縮損の計上で補助金への課税が相殺されますが、2年目以降は減価償却費が少ない分、課税所得は大きくなります。
圧縮記帳を行わなかったため、クラブハウスの建設費1億8700万円は耐用年数を24年間と仮定した場合、今後24年間毎年約800万円の減価償却費として計上することになると考えられます。
またこれは前述の誤解と関係する点なのですが、整備の事業主体がカマタマーレ讃岐というこ とは、所有権の移転を行っていない限りクラブハウスはカマタマーレ讃岐が所有する資産ということになります。事実、2023年度決算における固定資産は前年度より1億9700万円増加しています。
以上、現時点での自分が理解する範囲で、カマタマーレ讃岐の新クラブハウス整備に対する企業版ふるさと納税と建設費に関するスキームをまとめてみました。
企業版ふるさと納税など官民連携に関する最近の施策については理解不足である点が多く、今後研鑽を積んでいきたいと思います。
リンク
公式
宝山湖ボールパーク夢いっぱいプロジェクト
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