いわてグルージャ盛岡オーナー兼社長の秋田豊氏が退任 再びNOVA傘下へ

2024年09月30日

いわてグルージャ盛岡オーナー兼社長の秋田豊氏が退任 再びNOVA傘下へ

いわてグルージャ盛岡を運営する株式会社いわてアスリートクラブは2024年9月30日、クラブのオーナーであり代表取締役社長を務める秋田豊氏の退任を発表した。

秋田豊氏は2022年10月に、それまでクラブの親会社であったNOVAホールディングス株式会社から株式の一部を取得。発行済株式総数の33.4%を保有するオーナー兼代表取締役社長に就任していた。

この度、秋田豊が2024シーズンをもちまして株式会社いわてアスリートクラブの代表取締役オーナー兼代表取締役社長を退任することとなりましたのでお知らせいたします。

また、2025シーズン以降のクラブ体制や秋田豊からのご挨拶につきましては後日クラブより発表をさせていただきます。

【クラブ】秋田豊 退任について

【クラブ】秋田豊 退任について (2024年9月30日)
grulla-morioka.jp

日刊スポーツの報道によると、秋田氏が保有する全株式を以前の保有者であるNOVAホールディングスが買い戻す。報道が正しければ、株式譲渡後のNOVAの持分は51.4%となり、2年ぶりにクラブの親会社となる。

3いわてグルージャ盛岡の代表取締役オーナー兼社長の秋田豊氏(54)が、今季限りで退任する。現在は株式20%弱を保有しているNOVAホールディングスが、秋田氏が保有する33・4%の株式をすべて買い取ることが30日、分かった。来季からは同社が筆頭株主として経営に復帰する予定だ

【岩手】秋田豊社長が今季限りで退任、NOVAが経営復帰へ 経営悪化に今季J3最下位と低迷

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秋田体制の経緯

秋田氏のオーナー就任の経緯については、NOVAが秋田氏に打診したことが当時の会見で語られている。NOVAは経営権を手放したものの、18%の株式を保有する株主であり、またユニフォームスポンサーとしてクラブを支援し続けている。

秋田体制となった理由の一つとして、スタジアム建設のタイムリミットが近づく中で、県外企業のNOVAではなく秋田氏がクラブを牽引することで「県民一岩」となってスタジアム建設の機運を高める、という内容をオーナーを退任したNOVAホールディングス代表取締役社長稲吉正樹氏が述べている。

今回の決定は、スタジアム建設のタイムリミットが近づく今、正に「県民一岩」の機運が必要だと判断したためです。

グルージャが県外企業であるNOVAの連結会社ではなく、今やグルージャの顔であり、サッカー界のレジェンドである秋田新オーナーがクラブを牽引し、そしてNOVAが引き続きメインスポンサーとしてグルージャをサポートする。

そのような布陣を組むことが、新スタジアムを実現し、グルージャを更に前進させると考え、決断しました。

【クラブ】代表取締役オーナー退任のご挨拶

スタジアム建設のタイムリミットとは何か。クラブライセンス制度に関わる話である。

スタジアム整備とクラブライセンス

いわてグルージャ盛岡は2022年、クラブライセンス制度の施設基準の例外規定2を使ってJ2に昇格している。例外規定2は『Jリーグスタジアム基準』のうち「入場可能数」と「大型映像装置」を満たさないスタジアムであっても、Jリーグ規約第34条で定められた「理想のスタジアム」を将来的に整備することを約束することで、時限的に上位ライセンスを取得できる仕組み。昇格後3年目のシーズン中に訪れるライセンス申請までに、具体的な計画の提出を必要とし、昇格後5年目のシーズン末までに着工を行う必要がある(例外規定1への切り替え)。

ホームスタジアムであるいわぎんスタジアム(所有者:盛岡市)の入場可能数は5046人(うち芝生席3600人)。J2基準の入場可能数10000人(芝生席を含まない)を満たしておらず、またJ1・J2基準で必須となる大型映像装置もない。

岩手がオーナー交代を行なった2022年10月の時点では、2024年6月までに具体的なスタジアム整備の計画を提出する必要があった。提出できない場合、例外規定2を使ったJ2ライセンス取得は不可能になる

これが前述の「タイムリミット」である。

Jリーグ規約第34条〔理想のスタジアム〕
  1. 公式試合で使用するスタジアムは、Jリーグスタジアム基準を充足することに加え、アクセス性に優れ、すべての観客席が屋根で覆われ、複数のビジネスラウンジやスカイボックス、大容量高速通信設備(高密度Wi-Fi等)を備えた、フットボールスタジアムであることが望ましい。
  2. 前項の「アクセス性に優れる」とは、次の各号のいずれかを充足していることをいう。
  1. ホームタウンの中心市街地より概ね20分以内で、スタジアムから徒歩圏内にある電車の駅、バス(臨時運行を除く)の停留所または大型駐車場のいずれかに到達可能または近い将来に到達可能となる具体的計画があること
  2. 交流人口の多い施設(大型商業施設等)に隣接していること
  3. 前各号のほか、観客の観点からアクセス性に優れていると認められること

Jリーグ規約

秋田氏のオーナー社長就任当時の課題がスタジアム整備による例外規定の充足であることを確認した。ただし就任以降の2年間でスタジアムに関する大きな変更が2点あった。

例外規定2のスケジュール変更

1点目は例外規定のスケジュールが変更されている点である。

当初の予定ではJ2昇格後3年目に当たる2024年6月末が具体的な計画の提出期限であったが、これが2025年6月末と1年延長されている。同様に着工(例外規定1への切り替え)の期限も1年延長の2027年となった。この変更は2021年、2022年の2年間は「コロナの影響を大きく受けた」という理由によるもの。

岩手の1年前、2021年に例外規定2を使ってJ2に昇格したSC相模原は、同様の理由によりそれぞれの期限が2年延長となっている。

盛岡市内で30日、3回目となる「いわぎんスタジアム」のあり方を検討する協議委員会の会合が開かれ、来年6月までとされていたスタジアム整備計画のリーグへの提出期限が1年間延長されたことが発表されました。

来季J3昇格圏ならJ2入り可能に サッカー・いわてグルージャ盛岡 スタジアム整備計画案は提出期限が2025年6月へ1年延長

Jリーグスタジアム基準の改定

2点目は2024年の『Jリーグスタジアム基準改定である。

J1・J2基準の「入場可能数」が「Jリーグ規約第34条に定める「理想のスタジアム」の要件を満たし、ホームタウン人口等の状況、観客席の増設可能性(特に敷地条件)、入場料収入確保のための施策等を踏まえて理事会が総合的に判断した場合、5,000人以上(全席個席であること)で基準を満たすものとする。」と変更されている。

この基準緩和は2023年12月に正式発表されたが、事前にクラブに通知が行われていたらしく、秋田氏は2023年6月頃からいわぎんスタジアムのBコート(現在のホームスタジアムはAコート)を8500席に改修する構想を公表していた。

Jリーグスタジアム基準改定について (2023年12月19日)
aboutj.jleague.jp

以上、いわてグルージャ盛岡が抱えるスタジアムとクラブライセンス制度についての課題を制度面から確認した。

秋田氏のオーナー兼社長退任の理由や意思決定の方法については明らかになっていない。第一報の岩手朝日テレビでは「辞任の意向を固める」とされていたが、NOVAが経営権を再取得するのであれば、クラブを連結子会社化する決定を秋田氏の意志ひとつで行うことができるとは考えづらい。

岩手のトップチームは9月30日現在、J3最下位とJFL降格危機にある。トップチームの成績は本来オーナーや社長の職責ではないが、退任の理由を成績不振の責任を取るとする報道もある。

秋田体制となった理由を文字通りに解釈するならば、その使命であった「県民一岩」となってスタジアム建設の機運を高める、という点に関して、その成果が芳しくないことが退任の一因であることは考えられる。

クラブの新たな体制については後日正式に発表される予定。

リンク

公式発表

【クラブ】秋田豊 退任について (2024年9月30日)
grulla-morioka.jp

報道

サッカーJ3いわてグルージャ盛岡の秋田社長 今シーズン限りで辞任の意向を固める (2024年9月29日)
www.iat.co.jp
【岩手】秋田豊社長が今季限りで退任、NOVAが経営復帰へ 経営悪化に今季J3最下位と低迷 (2024年9月30日)
www.nikkansports.com
いわてグルージャ盛岡、秋田豊社長が辞任へ J3最下位に低迷 (2024年9月30日)
www.iwate-np.co.jp

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その他

Jリーグスタジアム基準改定について (2023年12月19日)
aboutj.jleague.jp
いわぎんスタジアム改修計画が正念場 事業費確保見通し立たず (2024年7月10日)
www.iwate-np.co.jp
いわてグルージャ盛岡オーナー兼社長の秋田豊氏が退任 再びNOVA傘下へ

日付: 2024年09月30日

最終更新日: 2024年09月30日

クラブ: 岩手

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