2024年11月25日
いわてグルージャ盛岡がNOVAによる子会社化を発表
いわてグルージャ盛岡を運営する株式会社いわてアスリートクラブは2024年11月25日、同社の筆頭株主である秋田豊氏が保有する全株式(全体の33.4%)をNOVAホールディングス株式会社に譲渡することを発表した。今回の株式譲渡によってNOVAは発行済株式総数の51.4%を保有することになり、2年ぶりにクラブの親会社となった。秋田豊オーナー兼代表取締役はクラブの経営から退く。
秋田豊氏は2022年10月に、それまでクラブの親会社であったNOVAから株式の一部を取得。発行済株式総数の33.4%を保有するオーナー兼代表取締役社長に就任していた。今回の株式譲渡によって、2022年10月以前のNOVAが経営権を持つ体制に戻ることになる。
このたび、弊社株式会社いわてアスリートクラブ(本社:岩手県盛岡市、代表取締役社長:秋田豊)が発行する株式の33.4%について、NOVAホールディングス株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:稲吉正樹)と秋田豊氏(個人)が株式譲渡契約を締結し、公益社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)において、本株式譲渡の承認がなされましたので、お知らせいたします。
これにより、NOVAホールディングス株式会社が保有するいわてアスリートクラブの株式は全体の51.4%となります。
秋田体制の使命
2年間の秋田体制を挟んで、再びNOVAがいわてグルージャ盛岡の経営権を取得することとなった。クラブ及びNOVAのリリースを文字通りに解釈するならば、秋田体制となった理由は、スタジアム建設のタイムリミットが近づくなかで、「県民一岩」となってスタジアム建設の機運を高めるため、と考えることができる。
今回の決定は、スタジアム建設のタイムリミットが近づく今、正に「県民一岩」の機運が必要だと判断したためです。
グルージャが県外企業であるNOVAの連結会社ではなく、今やグルージャの顔であり、サッカー界のレジェンドである秋田新オーナーがクラブを牽引し、そしてNOVAが引き続きメインスポンサーとしてグルージャをサポートする。
そのような布陣を組むことが、新スタジアムを実現し、グルージャを更に前進させると考え、決断しました。
株式会社いわてアスリートクラブとは 2019 年、当時の筆頭株主であった「パルコホールディングスグループ」から株式譲渡を受け、そのご縁が始まりました。2022 シーズンには J2 昇格を果たしましたが、スタジアム建設のタイムリミットが近づき「県民一岩」の機運が必要だと判断し、当時トップチーム監督であった秋田豊氏へ株式を譲渡いたしました。そして今回秋田氏から今後についての相談を受け、経営権の再取得を決意した次第です。
スタジアム整備とクラブライセンス
ここでスタジアム整備が必要とな る理由を再確認する。
いわてグルージャ盛岡は2022年、クラブライセンス制度の施設基準の例外規定2を使ってJ2に昇格している。例外規定2は『Jリーグスタジアム基準』のうち「入場可能数」と「大型映像装置」を満たさないスタジアムであっても、Jリーグ規約第34条で定められた「理想のスタジアム」を将来的に整備することを約束することで、時限的に上位ライセンスを取得できる仕組み。昇格後3年目のシーズン中に訪れるライセンス申請までに、具体的な計画の提出を必要とし、昇格後5年目のシーズン末までに着工を行う必要がある(例外規定1への切り替え)。
ホームスタジアムであるいわぎんスタジアム(所有者:盛岡市)の入場可能数は5046人(うち芝生席3600人)。J2基準の入場可能数10000人(芝生席を含まない)を満たしておらず、またJ1・J2基準で必須となる大型映像装置もない。
岩手がオーナー交代を行なった2022年10月の時点では、2024年6月までに具体的なスタジアム整備の計画を提出する必要があった。提出できない場合、今後例外規定2を使ったJ2ライセンス取得は不可能になる。
ここまでがオーナーチェンジが行われた2022年10月の状況である。ただし2023年以降、以下の変更がなされている。
1点目は例外規定のス ケジュール変更である。当初の予定ではJ2昇格後3年目に当たる2024年6月末が具体的な計画の提出期限であったが、これが2025年6月末と1年延長されている。同様に着工(例外規定1への切り替え)の期限も1年延長の2027年となった。この変更は2021年、2022年の2年間は「コロナの影響を大きく受けた」という理由によるもの。
2点目は2024年の『Jリーグスタジアム基準』改定である。J1・J2基準の「入場可能数」は「Jリーグ規約第34条に定める「理想のスタジアム」の要件を満たし、ホームタウン人口等の状況、観客席の増設可能性(特に敷地条件)、入場料収入確保のための施策等を踏まえて理事会が総合的に判断した場合、5,000人以上(全席個席であること)で基準を満たすものとする。」と変更されている。
秋田体制では変更を踏まえた7,500人規模のスタジアムを構想していたが、表に出ている情報を見る限りでは大きな進展は見られず、具体的な整備計画の提出期限である2025年6月に間に合う見込みは薄いと言っていいだろう。
したがって今回の秋田豊氏退任及びNOVAによる経営権再取得については、トップチームのJFL降格という競技面もさることながら、秋田体制の使命であったスタジアム整備の成果が芳しくなかったことが要因として考えることができる。
今後のクラブライセンスの見通し
前述の通り、いわてグルージャ盛岡は2022シーズンに例外規定2を使ってJ2に昇格している。例外規定2は昇格し た年からスタジアム整備のカウントダウンが始まる。仮にスタジアム整備が実現しなかった場合、今後例外規定2を使ってJ2に昇格することはできない。
したがって、岩手が具体的なスタジアム整備計画を2025年6月末日までに提出できない場合、2026シーズン以降のJ2ライセンスの取得は不可能となる。J2ライセンスの再取得には、J2基準を満たすスタジアムの着工(例外規定1)が条件となる。
なお本拠地のいわぎんスタジアムはJ3基準の入場可能数を満たしているため、今後のJ3ライセンス取得に影響はない。
追記 (2024/11/29)
いわてグルージャ盛岡は2024年11月29日、2022年2月に発足したいわぎんスタジアム協議委員会を打ち切ることを発表した。岩手がJFLに降格したことにより、J1・J2ライセンスの申請が不可能になることが理由。この協議会は2026シーズン以降のJ1・J2ライセンス取得に必要ないわぎんスタジアム改修計画を策定することが目的であった。
本日盛岡グランドホテルに於きまして、いわぎんスタジアム協議委員会が開かれました。2022年2月に秋田前社長にて発足した本委員会ですが、当初はJ3からJ1ライセンスへの申請に不可欠なスタジアム関連の基準を満たすべく2025年6月までにJリーグに計画書の申請が必要な建付けとなっておりました。
しかしながら来シーズン、いわてグルージャ盛岡はJFLへステージ移行となります。JFLからJ1ライセンスの申請は出来ず、JFLからはまずJ3のライセンス申請のみが許可されており、本委員会の当初の建付けとは異なる状況となっております。
現段階で既にスタジアムはJ3基準をクリアしております。2025年6月にJリーグへの計画書の提出の必要がなくなりましたので、今回をもっていわぎんスタジアム協議委員会につきましては一旦閉じる形とさせて頂きます。今後につきましては改めて協議委員の方々含め、グルージャを応援頂く方々にもご相談をしながら、人選や委員会名題も含め再考し、仕切り直しを行って参りたいと思います。
以前の記事では見落としていたが、JFL所属クラブはJ1・J2ライセンスを申請することができず(J1・J2クラブライセンス交付規則第18条)、J3ライセンスのみを申請することができる(J3クラブライセンス交付規則第3条)。そのため、岩手はJ1・J2ライセンス取得に必要なスタジアムの具体的な整備計画を2025年6月までに提出する必要がなくなってしまった。
J1・J2ライセンスを申請 可能なクラブ
第18条〔ライセンス申請者〕
J1・J2ライセンス等の申請日において、以下のいずれかの地位にあり、かつ、JFAの加盟チームとなってから2年以上が経過しているクラブのみが、J1・J2ライセンス等の申請者(以下「ライセンス申請者」という)となり得る。
① J1クラブ
② J2クラブ
③ J3クラブ
J3ライセンスを申請可能なクラブ
第3条〔申 請〕
(1) J3ライセンスの審査の申請日において、 以下のいずれかの地位にあるクラブのみが、J3ライセンスの申請者(以下「J3ライセンス申請クラブ」という)となり得る。
① J1クラブ
② J2クラブ
③ J3クラブ
④ 日本フットボールリーグ(JFL)に所属しているクラブ。
なお、クラブは新たな協議会を発足し、これまでのいわぎんスタジアム改修にこだわらない形でJ1・J2ライセンス取得に向けたスタジアム整備を検討していく。
前述の通り、今後例外規定2を使ってJ2に昇格することはできない。したがって、J2基準を満たすスタジアムをライセンス申請時の年度内に着工すること(例外規定1)がJ2ライセンス取得の条件となる。