2025年05月29日
【2024年度・先行発表】債務超過を解消していないクラブ
Jリーグは2025年5月28日、2024年度Jクラブ経営情報開示資料の先行発表版を公開した。先行発表版は3月決算の柏、湘南を除いた58クラブの経営情報。完全版は例年7月末に公開される。
2024年度決算では前年度に債務超過であった7クラブのうち4クラブが債務超過のままであった。
前年度に債務超過であった7クラブの動向
状態 | 数 | クラブ |
---|---|---|
債務超過解消 | 3 | 東京V、横浜FC、鳥栖 |
債務超過額減少 | 4 | 福岡、相模原、鳥取、YS横浜 |
債務超過を解消していないクラブ
アビスパ福岡、SC相模原、ガイナーレ鳥取、Y.S.C.C.横浜の4クラブが24年度決算において債務超過であった。
アビスパ福岡
項目 | 数値 | 前年差 |
---|---|---|
前年度の純資産額 | ▲3億9900万円 | |
24年度の純利益 | 1000万円 | |
24年度内の増資額 | 1億1800万円 | |
24年度の純資産額 | ▲2億7100万円 | 1億2800万円 |
(参考)24年度の売上高 | 30億5300万円 |
アビスパ福岡は純利益と第三者割当増資によって債務超過を解消する方針を示している。
SC相模原
項目 | 数値 | 前年差 |
---|---|---|
前年度の純資産額 | ▲5億2000万円 | |
24年度の純利益 | 3200万円 | |
24年度の純資産額 | ▲4億8900万円 | 3100万円 |
(参考)24年度の売上高 | 10億0200万円 |
ガイナーレ鳥取
項目 | 数値 | 前年差 |
---|---|---|
前年度の純資産額 | ▲3億0400万円 | |
24年度の純利益 | 100万円 | |
24年度の純資産額 | ▲3億0200万円 | 200万円 |
(参考)24年度の売上高 | 5億4200万円 |
ガイナーレ鳥取は昨年4月に増資の可能性が報じられていたが24年度内には実施されなかった。
Y.S.C.C.横浜
項目 | 数値 | 前年差 |
---|---|---|
前年度の純資産額 | ▲8300万円 | |
24年度の純利益 | ▲2300万円 | |
24年度内の増資額 | 2300万円 | |
24年度の純資産額 | ▲8300万円 | 0 |
(参考)24年度の売上高 | 2億5100万円 |
2026シーズン以降のクラブライセンスについて
クラブライセンス制度の財務基準では通常、債務超過は認められていないが、新型コロナウイルスの影響により2020年度以降、時限的に債務超過を認める特例措置が設けられていた。特例措置は24年度限りで廃止となり、25年度からは従来の財務基準が適用される。(ただし「3期連続赤字の禁止」については24年度を1期目としてカウントするため、2026シーズンのライセンスには影響しない)
したがって上記6クラブは25年度内に債務超過を解消しなければならない。
より具体的な説明をすると、2026シーズンのクラブライセンス審査において、25年度内の債務超過解消を合理的に説明できる 資料を提出する必要がある(財務基準F.06「予算および予算実績、財務状況の見通し」)。
基準未充足の場合
では25年度内に債務超過が解消できないと判断された場合、2026シーズンのクラブライセンスはどうなるか。
Jリーグが2021年10月に発表した「2022年度以降のクラブライセンス判定における財務基準について」には、「基準未充足となった場合の取扱い」として以下の内容が掲載されている。
■基準未充足となった場合の取扱い
上記の財務基準未充足となった場合には、J1・J2クラブは次シーズン下位リーグ所属、J3クラブは次シーズン勝点10点減とする。
しかしながらこの取扱いについて言及されたのは一度限りであり、特例措置(猶予期間)設置中の運用なのか、特例廃止後も同様の運用がされるのかは不明確である。
ここで一度クラブライセンス制度の基本に立ち返る。「債務超過の禁止」と「3期連続赤字の禁止」を規定している財務基準F.01及びF.06は共にA等級基準である。したがって基準未充足の場合は原則クラブライセンスが付与されない。ライセンスが不交付ということはJ1からJ3まで全てのリーグに参加できない、と考えることができる。
一方でJ2ライセンス、J3ライセンスについては、基準を充足しない場合でも安定開催に支障を及ぼさないと認められる場合、制裁付きでライセンスが付与される規定が設けられている。またJ3クラブライセンス交付規則には財務基準F.01およびF.06未充足の場合、制裁の内容を次シーズンの勝点減(最大10点)とする内容が明記されている。
断言できないものの、クラブライセンス審査において25年度内に債務超過が解消されないと判断された場合、2021年10月に示された「J1・J2クラブは次シーズン下位リーグ所属、J3クラブは次シーズン勝点10点減とする」が適用される可能性が高いと考えられる。
第21条 クラブライセンス不交付クラブ発生時の措置
J1クラブライセンス、J2クラブライセンスまたはJ3クラブライセンスの不交付または取消しが決定したJクラブが発生した場合、当該Jクラブに対する補欠等の処置については、理事会で審議決定する。
第21条 J1・J2ライセンスの付与/譲渡
(4) ライセンス申請者が、第8章から第12章に定める各基準のうちA等級のものをいずれか1つでも充足しない場合は、J1・J2ライセンスは付与されないものとする。J2ライセンスについては、いずれかを充足しない場合であっても、対象シーズンのJ2リーグの安定開催に支障を及ぼさないと認められる場合には、Jリーグ理事会がJ2ライセンスを付与することができる。かかる場合、Jリーグ理事会が制裁を科すものとし、制裁の種類はJリーグ規約第142条第1項各号を準用するものとする。
第5条 審査
(2) 前項の規定にかかわらず、理事会は、第7条から第 11 条までに定める基準のいずれかを充足しない場合であっても、対象シーズンのJ3リーグの安定開催に支障を及ぼさないと認められる場合には、J3ライセンスを交付することができる。かかる場合、理事会が制裁を科すものとし、制裁の種類はJリーグ規約第 142 条第1項各号を準用するものとする。ただし、財務基準 F.01 第3項および財務基準 F.06 第3項に定める基準が未充足であったJ3ライセンス申請クラブに対する制裁は、原則として、対象シーズンの勝点減(最大 10 点)とする。
Jリーグ規約第142条第1項
第142条 懲罰の種類
(1) チェアマンが、第133条第2号に定める違反行為をしたJクラブに対して科すことができる懲罰の種類は次のとおりとし、これらの懲罰を併科することができる。
- けん責 始末書をとり、将来を戒める
- 罰金 1件につき1億円以下の罰金を科す
- 中立地での試合の開催 試合を中立地で開催させる
- 一部観客席の閉鎖 一部の観客席を閉鎖し、そこには観客を入場させない
- 無観客試合の開催 入場者のいない試合を開催させる
- 試合の没収 得点を0対3の敗戦として、試合を没収する
- 勝点減 リーグ戦の勝点を1件につき15点を限度として減ずる
- 出場権剥奪 リーグカップ戦における違反行為に対する懲罰として次年度のリーグカップ戦への出場権を剥奪する
- 下位リーグへの降格 所属 するリーグより1つ以上下位のリーグに降格させる
- 除名 Jリーグから除名する(ただし、Jリーグ定款第9条の手続きを経るものとする)