2026特別シーズン Jリーグクラブライセンス レビュー

2025年09月27日

2026特別シーズン Jリーグクラブライセンス レビュー

Jリーグは2025年9月25日、2026特別シーズンのクラブライセンス判定結果を公表した。この記事では、その主なトピックをまとめる。

なお、判定結果公表に伴うメディア向けの発言録は、後日Jリーグ公式サイトに掲載予定である。公開され次第、本記事も加筆する。

今回の判定結果における主なトピックは以下の3点である。

  1. FC今治が例外規定の適用なくJ1ライセンス取得
  2. SC相模原の例外規定2「具体的な計画」の提出期限延長
  3. 財務基準に抵触するクラブはなし
クラブライセンス交付第一審機関(FIB)決定による2026特別シーズン J1・J2クラブライセンス判定結果について (2025年9月25日)
aboutj.jleague.jp
2026特別シーズンJ3クラブライセンス判定結果について (2025年9月25日)
aboutj.jleague.jp

2025/10/03 追記
2025年10月3日、Jリーグはクラブライセンス判定に関する発言録を公開した。新たに明らかになった情報はほとんどなかったが、内容を反映し記事を加筆した。

2026特別シーズンクラブライセンス判定結果発表および説明会発言録 (2025年10月3日)
www.jleague.jp

2026特別シーズン クラブライセンス一覧

J1クラブライセンス (49)

区分クラブ
例外規定なし43札幌、仙台、山形、鹿島、栃木、群馬、浦和、大宮、千葉、柏、FC東京、東京V、町田、川崎、横浜FM、横浜FC、湘南、甲府、松本、新潟、富山、清水、磐田、名古屋、岐阜、京都、G大阪、C大阪、神戸、岡山、広島、山口、讃岐、徳島、愛媛、今治、福岡、北九州、鳥栖、長崎、熊本、大分
例外規定2 (スタジアム)6いわき、水戸、金沢、藤枝、鹿児島、琉球
例外規定 (トレーニング施設)2いわき、藤枝

FC今治が新たにJ1ライセンスを取得した。

J2クラブライセンス (10)

区分クラブ
例外規定なし2FC大阪、鳥取
例外規定2 (スタジアム)8八戸、福島、栃木C、相模原、沼津、奈良、今治、宮崎

高知ユナイテッドSCはJ2ライセンスを申請したが、競技基準S.02「選手の育成体制(アカデミーチーム)」を満たしていないため、不交付となった。

J3クラブライセンス (7)

区分クラブ
例外規定なし7青森、岩手、新宿、三重、滋賀、高知、V大分

Y.S.C.C.横浜とアトレチコ鈴鹿は継続審議となった。理由は明らかにされていない。なおYS横浜は昨年11月、FIBから経営上の是正措置を通達されていた。

2025/09/30 追記
アトレチコ鈴鹿は2025年9月28日、公式WEBサイトを更新し、クラブライセンスの継続審議となった理由が施設基準に関する課題であることを明らかにした。

今回の判定は、主にホームスタジアムである「三重交通G スポーツの杜 鈴鹿サッカー・ラグビー場」における施設面の課題解決を前提としたものであり、現在、関係機関と連携しながら対応策の具体化を進めております。

J3ライセンス申請判定についてのお知らせ

J3ライセンス申請判定についてのお知らせ (2025年9月28日)
atletico-suzuka.com

2025/10/03 追記
発言録によると、YS横浜については財務面に懸念があり、継続審議となった。

Y.S.C.C.横浜は財務、アトレチコ鈴鹿は施設の状況で確認が必要ということになり、継続審議となりました。

2026特別シーズンクラブライセンス判定結果発表および説明会発言録


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以下、各トピックを見ていく。

FC今治が例外規定の適用なくJ1ライセンス取得

FC今治はJ1ライセンスを施設基準の例外規定を用いることなく取得した。これにより、アシックス里山スタジアムは2024年に緩和された入場可能数の基準が初めて適用されたスタジアムとなった。この事実が持つ意味は大きい。

24年改定後のJリーグスタジアム基準

まず入場可能数に関する改定内容を確認する。

J1は15,000人以上、J2は10,000人以上(芝生席は観客席とはみなされない)

椅子席で、J1は10,000席以上、J2は8,000席以上の座席があること(ベンチシートは1席あたりの幅を45cm以上とする)

ただし、Jリーグ規約第34条に定める「理想のスタジアム」の要件を満たし、ホームタウン人口等の状況、観客席の増設可能性(特に敷地条件)、入場料収入確保のための施策等を踏まえて理事会が総合的に判断した場合、5,000人以上(全席個席であること)で基準を満たすものとする。

Jリーグスタジアム基準改定について

改定前は「J1=15,000人以上」が絶対条件だったが、改定により「理想のスタジアム」と認められれば、5,000人以上でも基準を満たせるようになった。

アシックス里山スタジアム(入場可能数: 5,316人)はこの「理想のスタジアム」に該当すると判断された。ホームタウン人口の基準は明示されていないが、今治市は約15万人と中核市の条件(人口20万人)を満たさない規模である。そのため、5,316人規模でもJ1ライセンスが付与された。

Jリーグが定義する「理想のスタジアム」

次に、Jリーグ規約で定められた「理想のスタジアム」を確認する。

第34条〔理想のスタジアム〕

(1) スタジアムはJリーグスタジアム基準を満たすことに加え、以下の要件を備えることが望ましい。
① フットボール専用スタジアムであること
② アクセス性に優れること
③ すべての観客席が屋根で覆われていること
④ 複数のホスピタリティ設備や通信環境を備えていること

(2) 「アクセス性に優れる」とは、中心市街地から概ね20分以内で電車駅やバス停、大型駐車場に到達可能であること、またはそれに準じると認められることをいう。

Jリーグ規約

アシックス里山スタジアムはこの要件を満たすと判断された。屋根はメインスタンドのみだが、「望ましい」とあるため必須要件ではない。ただし将来的に改善を求められる可能性はある。

アクセスについては、今治駅から路線バスで20分弱、試合時にはイオンモール今治新都市の駐車場を活用できることから、「優れる」と認定されたとみられる。

増席計画との関係

FC今治は増席計画を発表しているが、今回のライセンス認定に直接関係はない。

仮に増積後の8,900人規模で基準を満たすと判断されていれば、例外規定1(着工を条件とする猶予)が適用されるはずだ。しかし今回は「例外規定なし」で認められたことから、現状の5,316人で基準を充足した扱いになる。ただし、増席計画が理事会判断に影響した可能性はある。

今回の今治のケースは、改定後基準の初適用例となり、地方クラブのスタジアム整備における重要な先例となる。

アシックス里山スタジアム増席計画のお知らせ (2025年9月23日)
www.fcimabari.com

SC相模原の例外規定2「具体的な計画」の提出期限延長

当初の予想では、相模原は「具体的な計画」を満たせずJ2ライセンス不交付と見られていたが、結果としてライセンスは交付された。詳しい経緯はプレビュー記事を参照のこと。

いわき、相模原の2クラブは、過去に例外規定2を用いてJ2に昇格しており、2025年6月末が、新スタジアムの具体的な整備計画(場所、予算、整備主体を明記)の提出期限となっていました。

いわきについては、場所、予算、整備内容の備わった具体的な整備計画が提出されたと評価され、例外適用が継続されることとなりました。今後、2027年11月末までに工事完了し、供用開始が行われなければなりません。(ただし、例外規定1の併用が認められた場合は、2031/32シーズンの開幕前日まで期限が延長されます)

相模原については、現時点では、計画の実現可能性について十分な確度を持っているとは言えない状況である、と評価されました。しかし、現計画に関するステークホルダーへのヒアリング結果や、これまでの相模原市とのコミュニケーションの経緯等を総合的に考慮し、例外適用を継続し、「具体的な計画」の提出期限を1年延期することとなりました。

クラブライセンス交付第一審機関(FIB)決定による2026特別シーズン J1・J2クラブライセンス判定結果について

なお、SC相模原のプレスリリースによると、「具体的な計画」の提出期限は2026年11月末とされている。したがって、この要件が問われるのは次回の26/27シーズンのライセンス審査ではなく、27/28シーズンのライセンス審査になることが明らかになった。

SC相模原は2021シーズンに施設基準の例外規定の適用によりJ2ライセンスを取得し、2023年6月30日までに施設基準を満たすスタジアム整備に関する具体的な計画を提出することが求められていました。その後、コロナ禍の影響を考慮した2年の提出猶予期間を経てむかえた2025年6月30日に神奈川県海老名市内を予定地とする「スタジアム整備計画」をJリーグ宛に提出いたしました。

今回のJ2ライセンス交付あたっては、「スタジアム整備計画」の蓋然性を担保するための詳細な計画立案を2026年11月末までにJリーグ宛提出することが求められています。

SC相模原は、計画の実現に向け引き続き各関係者と協議を続けてまいります。

2026特別シーズン J2クラブライセンス交付決定のお知らせ

交付規則運用細則では、例外規定2の最後に「やむを得ない事象が発生した場合は理事会が例外適用の有無を決定できる」と定められており、今回の延長はこの規定を根拠とする。ただし、23年、24年の延期理由がコロナ禍という「やむを得ない」と見なせるものだったのに対し、今回の延長は温情的な要素が強いと感じられる。恣意的な運用が続けば、ライセンス制度の信頼性が損なわれかねない。

例外規定は「クラブ淘汰のための基準」ではなく「スタジアム整備推進のための仕組み」として運用されてきた。その基本姿勢は今回も維持されたといえる。

2026特別シーズン J2クラブライセンス交付決定のお知らせ (2025年9月23日)
www.scsagamihara.com

2025/10/03 追記
発言録によれば、例外規定2はスケジュールを絶対的に遵守させるものではなく、スタジアム整備の質を重視し、柔軟に対応する方針が示された。今回の相模原の判定についても「制度主旨に沿った判断」であるとされた。

想定外の事象が発生した場合は理事会にて判断するとしています。例えば、例外適用を定めた際も、スタジアム着工のスケジュールを定めていただいていますが、とてもアクセスのよい場所にスタジアムを建設できる可能性があるにもかかわらず、Jリーグのスケジュールを重視するあまりあきらめることがあると本末転倒になるということが制度を設計するタイミングでも理事会で議論されました。
そのため、想定外の事象については理事会で判断するとしています。今回の相模原の判定についても、制度主旨に沿った判断となっています。

2026特別シーズンクラブライセンス判定結果発表および説明会発言録

財務基準に抵触するクラブはなし

2025年度は、コロナ禍に対応して設けられていた財務基準の特例措置が一旦廃止された。「一旦」としたのは、2026年度からはシーズン移行に伴い新たな特例措置が導入されるためである。特例措置の廃止により、これまで債務超過に陥っていたクラブは、今期末に債務超過を解消できる合理的な見通しを示すことが、2026特別シーズンのライセンス取得の条件となっていた。

今回公表された2026特別シーズンの判定結果では、財務基準を理由にライセンスが不交付となったクラブや、次シーズンに勝点減の制裁を受けるクラブは存在しなかった。ただし、これは今期末に債務超過に陥るクラブがないことを証明するものではない。実際の数値は来年の経営情報公表を待つ必要がある。一方、昨年の長野やYS横浜のように経営上の是正通達を受けたクラブも今回はなかった。

判定結果の公表と同時にメディア説明会も開催されているはずだが、現時点で財務基準に言及した記事は確認できない。なお、同説明会で配布された資料を『Jウォッチャー ~日本サッカー深読みマガジン~』がJリーグに先駆けて公開している。それによると、今回「特記事項」が通知されたクラブは13(前回は9)。特記事項とは、ライセンス判定の結果に直接影響はしないが、注意喚起が必要と判断された事項をクラブに伝えるものである。財務に関する特記事項が通知されたクラブについては、Jリーグが予算進捗や編成状況を随時ヒアリングしていく方針だ。

【ニュース】今治がJ1ライセンス、栃木シティがJ2ライセンスを新たに取得。山形はスタジアム新設・改修のため制裁免除。 (2025年9月25日)
www4.targma.jp

まとめ

今回はクラブライセンス判定結果から浮かび上がる論点を整理した。Jリーグの正式な見解については、今後公開される発言録を待ちたい。

リンク

公式

クラブライセンス交付第一審機関(FIB)決定による2026特別シーズン J1・J2クラブライセンス判定結果について (2025年9月25日)
aboutj.jleague.jp
2026特別シーズンJ3クラブライセンス判定結果について (2025年9月25日)
aboutj.jleague.jp
2026特別シーズンクラブライセンス判定結果発表および説明会発言録 (2025年10月3日)
www.jleague.jp

プレビュー

2026特別シーズン Jリーグクラブライセンス プレビュー (2025年9月22日)
2026特別シーズン Jリーグクラブライセンス プレビュー 施設基準編 (2025年9月25日)
2026特別シーズン Jリーグクラブライセンス レビュー

日付: 2025年09月27日

最終更新日: 2025年10月03日

クラブ:

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2026特別シーズン Jリーグクラブライセンス プレビュー 施設基準編

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