2022年05月28日
【2021年度先行発表】債務超過額が増加したクラブ、新たに債務超過になったクラブ
Jリーグは2022年5月27日、2021年度のJクラブ経営情報開示資料の先行発表版を公表しました。先行発表版は3月決算の柏、湘南 、磐田を除いた54クラブ(+いわきFC)の経営情報で、完全版は例年7月末に公開されています。
2021年度決算では、2020年度決算で債務超過になった10クラブのうち3クラブが債務超過の解消を達成しています。その他7クラブのうち、1クラブでは債務超過額が減少していますが、6クラブで債務超過額が増加しています。また新たに3クラブが債務超過となったため、2021年度決算で債務超過の状態であるクラブは合計10クラブです。
2021年度決算におけるクラブの動向
状態 | 数 | クラブ |
---|---|---|
債務超過解消 | 3 | 秋田、YS横浜、長野 |
債務超過額減少 | 1 | 鳥栖 |
債務超過額増加 | 6 | C大阪、福岡、仙台、東京V、山口、鳥取 |
新たに債務超過化 | 3 | 名古屋、福島、沼津 |
債務超過額が増加したクラブ
セレッソ大阪、アビスパ福岡、ベガルタ仙台、東京ヴェルディ、レノファ山口FC、ガイナーレ鳥取の6クラブ
セレッソ大阪
- 2020年度決算の純資産額: -7.88億円
- 2021年度決算の純資産額: -12.04億円 (4.16億円)
- 2021年度決算の当期純利益: -4.15億円
- (参考)2021年度決算の営業収入: 37.38億円
アビスパ福岡
- 2020年度決算の純資産額: -2.17億円
- 2021年度決算の純資産額: -3.54億円 (1.37億円)
- 2021年度決算の当期純利益: -5.05億円
- 2021年度内の増資額: 3.67億円
- (参考)2021年度決算の営業収入: 21.32億円
ベガルタ仙台
- 2020年度決算の純資産額: -1.24億円
- 2021年度決算の純資産額: -2.64億円 (1.40億円)
- 2021年度決算の当期純利益: -1.40億円
- (参考)2021年度決算の営業収入: 21.21億円
ベガルタ仙台は2022年度内に最大3億円規模の増資の実施を予定しています。
東京ヴェルディ
- 2020年度決算の純資産額: -3.99億円
- 2021年度決算の純資産額: -5.04億円 (1.05億円)
- 2021年度決算の当期純利益: -1.05億円
- (参考)2021年度決算の営業収入: 17.55億円
レノファ山口FC
- 2020年度決算の純資産額: -1.24億円
- 2021年度決算の純資産額: -2.64億円 (1.40億円)
- 2021年度決算の当期純利益: -1.40億円
- (参考)2021年度決算の営業収入: 10.10億円
レノファ山口は増資の実施を計画しています。
ガイナーレ鳥取
- 2020年度決算の純資産額: -1.58億円
- 2021年度決算の純資産額: -2.41億円 (0.83億円)
- 2021年度決算の当期純利益: -0.83億円
- (参考)2021年度決算の営業収入: 3.81億円
新たに債務超過になったクラブ
名古屋グランパス、福島ユナイテッドFC、アスルクラロ沼津の3クラブ
名古屋グランパス
- 2020年度決算の純資産額: 0.42億円
- 2021年度決算の純資 産額: -2.96億円 (3.38億円)
- 2021年度決算の当期純利益: -3.37億円
- (参考)2021年度決算の営業収入: 61.73億円
福島ユナイテッドFC
- 2020年度決算の純資産額: -0.30億円
- 2021年度 決算の純資産額: -0.13億円 (0.43億円)
- 2021年度決算の当期純利益: -0.43億円
- (参考)2021年度決算の営業収入: 3.67億円
アスルクラロ沼津
- 2020年度決算の純資産額: 0.30億円
- 2021年度決算の純資産額: -0.10億円 (0.40億円)
- 2021年度決算の当期純利益: -0.40億円
- (参考)2021年度決算の営業収入: 3.61億円
クラブライセンス判定について
新型コロナウイルスの影響を受けて設定されたクラブライセンス制度における財務基準の特例措置によって、2020年度決算、2021年度決算では新たに債務超過になることが認められています。したがって、2021年度決算で債務超過であったとしても、2023年シーズンのクラブライセンス判定には影響しません。
特例措置は2021年度決算までが対象となり、2022年度決算、2023年度決算は猶予期間の対象となります。猶予期間では以下のルールが適用されます。
- 債務超過が解消されていなくてもよいが、前年度より債務超過額が増加してはいけない
- 新たに債務超過に陥ってはいけない
- 3期連続赤字のカウントをスタートする
また猶予期間は2023年度決算までが対象となり、2024年度決算からは特例措置なしになるため、例外なく債務超過が禁止となります。
2021年度決算で債務超過の状態であるクラブは、2024年度決算(1月決算であれば2025年1月末)までに債務超過を解消しなければなりません。2022年度、2023年度、2024年度の3年間で債務超過を解消する計画を立てる必要があります。
以上はクラブライセンス判定に抵触しないための最低限の条件です。なるべく早く債務超過を解消し、将来の債務超過化の可能性を低減するための十分な純資産額を維持するのが望ましいことは言うまでもありません。
基準未充足となった場合
2021年10月にJリーグが発表した「2022年度以降のクラブライセンス判定における財務基準について」内には、基準未充足となった場合の取扱いが公表されています。
■基準未充足となった場合の取扱い
上記の財務基準未充足となった場合には、J1・J2クラブは次シーズン下位リーグ所属、J3クラブは次シーズン勝点10点減とする。
これは猶予期間中の財務基準未充足、具体的には「新たに債務超過に陥った」「債務超過額が増加した」場合を対象にした制裁と考えられます。
なお2022年の「J1クラブライセンス交付規則」「J2クラブライセンス交付規則」「J3クラブライセンス交付規則」には記載がないため、2022年のライセンス申請(2023年シーズンのクラブライセンス判定)では適用されず、2023年のライセンス申請(2024年シーズンのクラブライセンス判定)から適用されるものと予想されます。
例えば、2022年度決算で債務超過額が増加した場合、2023年シーズンはこれまで通りのカテゴリに所属できますが、2024年シーズンは成績に関わらず直下のカテゴリに降格、2023年シーズンがJ3所属の場合は2024年シーズンは勝点10減ということになります。