2024年09月23日
2025シーズン Jリーグクラブライセンス プレビュー
2024年9月末に2025シーズンのJリーグクラブライセンスの審査結果が発表される。発表を前にライセンス制度の昨季からの変更点や、審査内容の注目点を確認する。
昨季からの変更点
2023年12月に2024年度のクラブライセンス制度に関する変更点が公表されている。
J1ライセンスとJ2ライセンスの再統合
2024年にJ1、J2、J3のそれぞれに設けられていたクラブライセンス交付規則が、「J1・J2クラブライセンス交付規則」「J3クラブライセンス交付規則」の2本建てとなった。これに伴い、J2ライセンスの判定機関がJリーグ理事会からクラブライセンス交付第一審機関(FIB)に変更となった。
これは2022シーズンまでの方式に戻った形。J1ライセンスとJ2ライセンスの区別は施設基準I.01「公認スタジアム」、施設基準I.04「トレーニング施設」の内容で判定される。
判定スケジュールの統一
昨年まではJ1ライセンス及び新規クラ ブを対象としたJ3ライセンスの判定結果は9月末の発表、J2ライセンス及び既存クラブを対象としたJ3ライセンスの判定結果は10月末の発表であったが、今年からすべてのクラブライセンス判定結果発表が9月末に統一されることになった。
審査内容の注目点
昨年の「2024シーズンJ1およびJ3(入会希望)クラブライセンス判定結果発表ならびに説明会」にライセンス審査に関する詳しい内容が掲載されている。ライセンス判定のロジックについてJリーグによる公式な見解が掲載されているため、こちらを先に読むことを推奨する。
財務基準
コロナ禍の影響により設けられた財務基準の特例措置は、2024年度決算を1年間の猶予期間として、2025年度に廃止される。2025シーズンのクラブライセンス審査においては、進行中の2024年度決算の見通しを審査の対象とする(財務基準F.06)。猶予期間の対象となる2024年度決算では「債務超過が解消されていなくてもよいが、前年度より債務超過額が増加してはいけない」「新たに債務超過に陥ってはいけない」というルールが適用される。
2021年10月発表の「基準未充足となった場合の取扱い」が変更なく適用されるならば、下記のいずれかの条件を満たさない場合、J1・J2クラブは次シーズン下位リーグ所属、J3クラブは次シーズン勝点10点減となる。
■基準未充足となった場合の取扱い
上記の財務基準未充足となった場合には、J1・J2クラブは次シーズン下位リーグ所属、J3クラブは次シーズン勝点10点減とする。
前年度より債務超過額が増加してはいけない
2023年度決算では東京V、福岡、鳥栖、横浜FC、YS横浜、相模原、鳥取の7クラブが債務超過であった。これらのクラブは2025シーズンのクラブライセンス審査において、進行中の2024年度で純利益を計上または増資を実施することによって債務超過額が増加しないことを合理的に示すことが必要となる。
7クラブのうち福岡と鳥取については、時期は不明であるものの増資の可能性が示唆されている。
施設基準
秋田、鹿児島、琉球のJ1・J2ライセンス
ブラウブリッツ秋田、鹿児島ユナイテッドFC、FC琉球の3クラブは、2025シーズンのクラブライセンス審査においてJ1・J2ライセンスが不交付になる可能性がある。
この3クラブはホームスタジアム改修の際に、「Jリーグスタジアム基準」においてJ1・J2基準で必須条件である「新設及び大規模改修を行うスタジアムについては、原則として屋根はすべての観客席を覆うこと」が免除された経緯を持つ。その理由は各クラブが構想・計画する新スタジアムとの 二重投資を回避するためである。しかしながら基準免除から5年以上経過しているにも関わらず、その計画が一向に進捗しないとクラブライセンス事務局に判断されたことから、昨年の審査を前にライセンス不交付の可能性が示唆された。
ブラウブリッツ秋田
2019シーズンのクラブライセンス申請において、県・市の新スタジアム整備の意向を受け、ソユースタジアムへの屋根設置が免除され、J2クラブライセンスが交付された
しかしながら、その後5年が経過している現時点においても、新スタジアム整備に関する基本計画すら策定されておらず、実現が不透明であると言わざるを得ない状況
鹿児島ユナイテッドFC
2018シーズンのクラブライセンス申請において、県・市の新スタジアム整備の意向を受け、白波スタジアムへの屋根設置が免除され、J2クラブライセンスが交付された
しかしながら、その後6年が経過している現時点においても、新スタジアム整備に関する基本計画すら策定されておらず、実現が不透明であると言わざるを得ない状況
FC琉球
2018シーズンのクラブライセンス申請において、県からの新スタジアム整備の意向を受け、タピック県総ひやごんスタジアムへの屋根設置が免除され、J2クラブライセンスが 交付された
その後、県にて「Jリーグ規格スタジアム整備基本計画」が策定されたものの、5年以上が経過している現時点においても、新スタジアム整備に関する具体的な進展は確認できていない
結果的にこの3クラブには2024シーズンのJ1・J2ライセンスが交付されているが、今後もJ1・J2ライセンス不交付が懸念される状態にある。
混同されがちであるが、この件は施設基準の例外規定とは無関係である。したがって何年以内に何をどこまで進行させなければならないといった決まった基準はない。J1・J2ライセンスの審査機関であるFIBによって新スタジアムの「計画が進捗している」と判断されることが、今後のJ1・J2ライセンス交付の条件となる。
各クラブの状況を客観的に判断すると、J1・J2ライセンス交付の可能性が最も高いのは候補地が確定していて県による基本計画が策定されている(ただし基本計画は改定予定)琉球だと考えらえる。一 方で秋田、鹿児島の2クラブは現時点で候補地が未定であり、ここで線引きされる可能性は十分にあり得る。
いわき、岩手、相模原のJ2ライセンス
先に断っておくが、この項目は2025シーズンのライセンス判定には影響しない。施設基準の例外規定2によるライセンス運用の再確認である。
例外規定2はJリーグ規約第34条で定められた「理想のスタジアム」を将来的に整備することを約束することで、スタジアム基準の一部(入場可能数、大型映像装置)を満たしていなくても上位ライセンスを取得できる仕組み。
Jリーグ規約第34条〔理想のスタジアム〕
- 公式試合で使用するスタジアムは、Jリーグスタジアム基準を充足することに加え、アクセス性に優れ、すべての観客席が屋根で覆われ、複数のビジネスラウンジやスカイボックス、大容量高速通信設備(高密度Wi-Fi等)を備えた、フットボールスタジアムであることが望ましい。
- 前項の「アクセス性に優れる」とは、次の各号のいずれかを充足していることをいう。
- ホームタウンの中心市街地より概ね20分以内で、スタジアムから徒歩圏内にある電車の駅、バス(臨時運行を除く)の停留所または大型駐車場のいずれかに到達可能または近い将来に到達可能となる具体的計画があること
- 交流人口の多い施設(大型商業施設等)に隣接していること
- 前各号のほか、観客の観点からアクセス性に優れていると認められること
申請時点では具体性を伴う計画を必要としないが、例外規定2を使って昇格した瞬間からスタジアム整備のカウントダウンが始まる。まず昇格3年目に行うライセンス申請で具体的な計画の提出が必要となる。昇格後5年目のシーズン終了までに着工を行うことで、着工を条件に上位ライセンスが取得できる例外規定1に切り替えることができる。
過去に例外規定2を使って昇格したのは相模原(2021)、岩手(2022)、いわき(2023)の3クラブ。そのうち相模原は2023年に具体的な計画の提出期限となる昇格3年目を迎えたが、「例外規定申請後の2年間(2020、2021年度)はコロナの影響を大きく受けたと判断し、計画提出期限を2025年6月まで延長する。」という理由により、引き続きJ2ライセンスが交付されている。
また2024年に岩手が昇格3年目を迎えているが、同様に具体的な計画の提出期限が2025年6月と1年延長されている。したがって2025シーズンのライセンス判定において例外規定2に関する案件はない。
提出期限延長により、いわき、岩手、相模原の3クラブは揃って2025年6月末が具体的な計画の提出期限となっている。具体的な計画が提出できなければ2026シーズンのJ1・J2ライセンスは不交付となる。
競技基準
FC大阪のJ2ライセンス
FC大阪はU-15チームを持っていなかったため、競技基準S.02「選手の育成体制(アカデミーチーム)」未充足によりJ3所属クラブで唯一2024シーズンのJ2ライセンスを取得できなかった。FC大阪は2024年にU-15チームを立ち上げており、活動実績も確認できる。現時点でFC大阪によるJ2ライセンス申請の発表はないが、未充足となった競技基準S.02がクリアできる見込みであるため、J2ライセンスは交付される可能性が高い。
JFLクラブによるJ3ライセンス申請
JFL所属のラインメール青森、栃木シティ、クリアソン新宿、レイラック滋賀、ヴィアティン三重、高知ユナイテッド、ヴェルスパ大分の7クラブがJ3ライセンス を申請している。そのうち青森、新宿、滋賀、三重、V大分の5クラブは昨年の審査で2024シーズンのJ3ライセンスを取得している。
今季JFLに昇格を果たした栃木シティFC、昨年申請したものの継続審査となり、最終的に申請を辞退した高知ユナイテッドの2クラブは、現時点で共にJ3参入圏内に位置しており、判定結果が特に注目される。
なお入場者数などを判定対象とする入会審査はJ3ライセンスの審査とは別途行われる。