2023年01月03日
2023年度決算がクラブライセンス制度の財務基準・特例措置の対象に
Jリーグクラブライセンス関連規則の2023/01/01改正版(以降、2023年版)が公開されました。2023年版の交付規則では、2020年に決定したコロナ禍における財務基準の特例措置のスケジュールを改定し、2023年度決算を特例措置の対象、2024年度決算を猶予期間の対象とする内容が記載されています。
Jリーグのクラブライセンス制度では財務基準として各クラブに債務超過の禁止と3期連続赤字の禁止を課していますが、新型コロナウイルスの影響を受けて財務基準に特例措置を時限的に設けています。2020年10月に以下の内容が発表されました 。
2020年度決算、2021年度決算は特例措置の対象として、債務超過や3期連続赤字であってもライセンス交付の判定対象にしないことを定めています。
2022年度決算、2023年度決算は猶予期間の対象として、債務超過が解消されていなくてもよいが、債務超過額の増加と新たに債務超過に陥ることが禁止されています。また再び3期連続赤字禁止のカウントが始まります。
Jリーグは2022年6月に特例措置の延長をしないことを発表していましたが、2023年版の交付規則に記載された内容では当初のスケジュールを改定し、2023年度決算が特例措置の対象、2024年度決算が猶予期間の対象としています。
当初の特例措置および猶予期間
2020年度決算 | 2021年度決算 | 2022年度決算 | 2023年度決算 | 2024年度決算 | 2025年度決算 |
---|---|---|---|---|---|
特例措置 | 猶予期間 | 特例措置なし | |||
|
|
|
2021年1月1日改正
当初のスケジュールでは、2020年度決算、2021年度決算で債務超過に陥ってしまったクラブは2024年度決算(1月決算の場合は2025年1月末日)までに債務超過を解消する必要がありました。
改正後の特例措置および猶予期間
2020年度決算 | 2021年度決算 | 2022年度決算 | 2023年度決算 | 2024年度決算 | 2025年度決算 | 2026年度決算 |
---|---|---|---|---|---|---|
特例措置 | 猶予期間(*) | 特例措置 | 猶予期間 | 特例措置なし | ||
|
|
|
|
|
|
2023年1月1日改正
改定後のスケジュールでは、2023年度決算は再び特例措置の対象に、2024年度決算は1年間の猶予期間に、2025年度以降の決 算が特例措置なしとなっています。したがって、2020年度決算、2021年度決算で債務超過に陥ってしまったクラブ、また2023年度に新たに債務超過に陥ってしまったクラブは、2025年度決算(1月決算の場合は2026年1月末日)までに債務超過を解消する必要があります。債務超過解消の期限が1年間伸びました。また、3期連続赤字の禁止は2024年度決算からカウントが再開するため、2027年のライセンス申請(2028年シーズンのクラブライセンス)から再び判定の対象となります。
スケジュール改定の理由は
前述の通り2022年6月の特例措置の延長なしの発表をしていたことや、上記の内容に関してのプレスリリースや報道がほとんどなかったこともあって、2023年度版の交付規則にこの記載を見つけたときは校正ミスを疑うなど半信半疑でしたが、この内容について書かれた記事を一件だけ見つけることができました。
2022年12月13日付のJウォッチャーではJリーグの第4回社員総会及び実行委員会の内容を記しています。その中でJリーグが示した2023年予算の概要として以下の内容が引用という形で記載されています。
■ 2023年予算の概要
- 2023年はコロナ対応は一定程度継続しながらも、今後新たな2つの成長テーマをベースにJリーグ全体の成長を促進する
- テーマの一つである「トップ層がナショナル(グローバル)コンテンツとして輝く」ために、均等配分金に重きを置いた配分構造から、これまで以上に成長を促進するための競技成績やファン増加などへの結果配分へシフトする
- もう一つのテーマは「60クラブがそれぞれの地域で輝く」。各地域での露出拡大のための15億円の予算確保と、これまで以上にクラブをサポートする部署を設置
- 保守的な収益見込みを踏まえての赤字予算の縮小と上記方針によりクラブへの均等 配分金額は減少するも、今後の成長戦略の動向によりクラブへの配分原資とJリーグ全体の成長原資を確保していきたい
※上記方針の変更により、柔軟なクラブ経営を可能とするため、23年度はクラブライセンスの財務基準を再度特例措置とし、猶予期間を24年度までに1年延長する(23年度:債務超過判定対象外、24年度:債務超過額増加と新規発生は不可・3期連続赤字1期目)
Jリーグの配分金に関する方針変更(配分金額の減少)がスケジュール改定の理由であると読み取ることができます。実際に、公益社団法人 日本プロサッカーリーグの2023年度予算では、各クラブへの配分金の合計は114.4億円と、前年度より37億円減少しています。
交付 規則の原文
基準番号F.01 A等級 年次財務諸表(監査済み)
中略
(2) 提出された財務諸表に基づいて審査を行い、以下のいずれかに該当する場合は基準F.01を満たさないものとする。
① 3期以上連続で当期純損失を計上した場合(ただし、ライセンスを申請した日の属する事業年度の前年度末日現在の純資産残高がライセンスを申請した日の属する事業年度の前年度の当期純損失の額の絶対値を上回っている場合は本項目に該当しないものとみなす)。なお、本項目は、2027年のライセンス申請において2024年度決算を1期目として適用を開始するものとし、2026年までのライセンス申請においては適用しない。
② ライセンスを申請した日の属する事業年度の前年度末日現在、純資産の金額がマイナスである(債務超過である)場合。本項目は、2026年のライセンス申請から適用するものとし、2025年までのライセンス申請においては適用しない。また、2025年のライセンス申請においては、ライセンスを申請した日の属する事業年度の前年度末日において債務超過であったとしても、さらにその前年度末日において既に債務超過であって、ライセンスを申請した日の属する事業年度の前年度末日において債務超 過額がその前年度の債務超過額と同額か又は当該債務超過額より減少しているときは、本項目に該当しないものとみなす。
2023/04/06追記
第2号の「債務超過の禁止」については文章に間違いがあるのではないか、という記事を書きました。
以上はJ1クラブライセンス交付規則・運用細則からの引用ですが、J2クラブライセンス交付規則、J3クラブライセンス交付規則も2023年版では同様の変更がなされています。
2022年版の原文との比較は以下の記事を参照してださい。
財務基準の特例措置に関する時系列
2020年4月
新型コロナウイルスの影響を考慮して、2020年のライセンス判定(2021年シーズンのクラブライセンス)において、3期連続赤字および債務超過を判定対象外とすることを決定。
2020年10月
2020年度決算、2021年度決算を特例措置、2022年度決算、2023年度決算を猶予期間とするスケジュールを発表。
2021年10月
猶予期間中の「基準未充足となった場合の取扱い」を発表。
2022年6月
「特例措置延長の必要性はない」ことを発表。