2026年夏のシーズン移行に伴い、Jリーグのクラブライセンス制度におけるスケジュールも変更となった。従来は6月末だったライセンス申請期限は12月末に、9月末だった判定結果発表は翌年3月末に変更される。
一方、移行期に当たる2026/27シーズンのクラブライセンスについては特例的なスケジュールが採用され、申請期限は2026年2月末、判定結果発表は同年5月末に設定された。
この記事では、2026年5月末に発表予定の2026/27シーズンのクラブライセンス審査における財務基準の取扱いを考察する。
- 2026/27シーズンクラブライセンス判定 プレビュー 総論
- 2026/27シーズンクラブライセンス判定 プレビュー 財務基準編
- 2026/27シーズンクラブライセンス判定 プレビュー 施設基準編
財務基準編
ここでは2026/27シーズンのクラブライセンス判定において、財務基準に抵触する可能性のあるクラブの扱いを考察していく。要旨は以下の2点である。
- 2025年度決算において債務超過であったクラブ、具体的には高知ユナイテッドSCに2026/27シーズンの勝点減という制裁が科されるか否か
- 事業年度を17ヶ月(2025年2月から2026年6月)としたクラブ、具体的には北海道コンサドーレ札幌とガイナーレ鳥取は2026年6月期での債務超過が認められるか
この記事では、制度上の条文と実際の運用の双方を踏まえながら、2026/27シーズンの財務基準の取扱いを整理していく。
参考: 2026特別シーズンクラブライセンス判定結果発表および説明会発言録新規タブで開きます
前提となる知識
財務基準F.01とF.06
「3期連続赤字の禁止」と「債務超過の禁止」は財務基準F.01およびF.06で規定されている。
- F.01 → 前年度決算の確定値
- F.06 → 進行年度決算の見込み
2020シーズンのクラブライセンス(2019年6月申請、同年9月判定結果発表)の場合、財務基準F.01の対象となるのは2019年1月期決算の確定値であり、財務基準F.06の対象となるのは2020年1月期決算の見込みである。
つまり、「2019年1月期決算で債務超過でないこと(F.01)」および「進行中の2020年1月期決算で債務超過に陥らないことを合理的に説明すること(F.06)」がライセンス交付の条件となる。
財務基準の特例措置
クラブライセンス制度における財務基準の特例措置は、新型コロナウイルス感染症の影響を受け2020年に導入された。
「特例措置」と「猶予期間」という2つの区分で構成され、それぞれ特定の事業年度に対して適用される。
-
特例措置:
- 債務超過および3期連続赤字をライセンス交付の判定対象としない
- 対象年度に新たに債務超過に陥った場合も判定対象としない
-
猶予期間:
- 債務超過が解消されていなくてもよいが、前年度より債務超過額が増加してはならない
- 新たに債務超過に陥ってはならない
- 3期連続赤字のカウントを開始する
2020年度および2021年度が特例措置、2022年度は猶予期間、その後、配分金改革の影響により2023年度は再び特例措置、2024年度は猶予期間、そして2025年度からは通常運用に戻るスケジュールとされていた。
したがって、これらの特例措置・猶予期間の対象年度に債務超過に陥っていたクラブは、2025年度決算を期限として債務超過を解消する必要があった。
2025年9月、Jリーグはシーズン移行に伴うクラブライセンス制度における新たな財務基準の特例措置新規タブで開きますを発表した。2026特別シーズンおよび2026/27シーズンに対応する事業年度は特例措置の対象となり、2027/28シーズンに対応する事業年度は猶予期間の対象となる。
| 事業年度 | 内容 |
|---|---|
| 2020年度 | 特例措置 |
| 2021年度 | 特例措置 |
| 2022年度 | 猶予期間 |
| 2023年度 | 特例措置 |
| 2024年度 | 猶予期間 |
| 2025年度 | 通常運用 |
| 2026特別 | 特例措置 |
| 2026/27 | 特例措置 |
| 2027/28 | 猶予期間 |
| 2028/29 | 通常運用 |
2026/27シーズンのライセンス審査における財務基準
以上の前提を踏まえると、2026/27シーズンのライセンス審査では以下の2期が対象となる。
- F.01 → 2025年度(2026年1月期)決算の確定値
- F.06 → 2026年度(2026年6月期)決算の見込み
ただし後者は特例措置の対象となるため、2026/27シーズンのライセンス審査において実際に問われるのは、前者、すなわち2025年度(2026年1月期)決算の確定値である。
つまり、2025年度決算で債務超過でないことが財務基準を満たす条件となる。
2025年度決算で債務超過であったクラブはどうなるか
2024年度決算では、アビスパ福岡、SC相模原、高知ユナイテッドSC、ガイナーレ鳥取、Y.S.C.C.横浜の5クラブが債務超過であった。
この記事を公開する時点では、2025年度のJクラブ決算一覧はまだ発表されていない。
アビスパ福岡は債務超過解消を発表しており、SC相模原は官報掲載の決算公告により債務超過の解消が確認できる。ガイナーレ鳥取は後述する「事業年度が17ヶ月のクラブ」に該当し、Y.S.C.C.横浜の動向は不明である。
一方、高知ユナイテッドSCについては、クラブ独自の発表新規タブで開きますにおいて2025年度決算で債務超過であることが確認されている。
ここでは、その取扱いについて考察する。考えられる可能性は2通りある。
可能性1. 特段の制裁を伴わない運用
1つ目は、特段の制裁を伴わないままシーズン移行に伴う新たな特例措置へ移行し、実質的に債務超過解消期限が延長される運用である。
交付規則の「(債務超過の禁止は)2029年のライセンス申請から適用するものとし、2026年から2028年のライセンス申請においては適用しない」という文面を素直に読めば、2026年のライセンス申請では債務超過の禁止を適用しない、したがって債務超過であっても財務基準F.01を充足する、という運用になると解釈できる。
改定後の財務基準F.01 (下線部が改定箇所)
出典J1・J2クラブライセンス交付規則 運用細則新規タブで開きます(2) 提出された財務諸表に基づいて審査を行い、以下のいずれかに該当する場合は基準F.01を満たさないものとする。なお、決算期変更などにより、事業年度が1年未満または1年を超える場合には、判定方法はFIBが決定するものとする。
① 3期以上連続で当期純損失を計上した場合(ただし、ライセンスを申請した日の属する事業年度の前年度末日現在の純資産残高がライセンスを申請した日の属する事業年度の前年度の当期純損失の額の絶対値を上回っている場合は本項目に該当しないものとみなす)。なお、本項目は、2030年のライセンス申請において2027年度決算を1期目として適用を開始するものとする。
② ライセンスを申請した日の属する事業年度の前年度末日現在、純資産の金額がマイナスである(債務超過である)場合。なお、本項目は、2025年のライセンス申請において2024年度決算には適用しない。また、2029年のライセンス申請から適用するものとし、2026年から2028年のライセンス申請においては適用しない。さらに、2029年のライセンス申請においては、ライセンスを申請した日の属する事業年度の前年度末日において債務超過であったとしても、さらにその前年度末日において既に債務超過であって、ライセンスを申請した日の属する事業年度の前年度末日において債務超過額がその前年度の債務超過額と同額かまたは当該債務超過額より減少しているときは、本項目に該当しないものとみなす。
また、昨年の2026特別シーズンのライセンス審査において、進行中の2025年度決算見込みで債務超過を解消できないと判断されていたのであれば、ライセンス交付の際に何らかの付言があるべきではないか、という見方もできる。実際、高知には財務面で「特記事項」も「是正通達」も付されていない。
可能性2. 勝点減の制裁を伴う運用
もう1つは、2026/27シーズンのJ3リーグにおいて勝点減(最大10点)の制裁が科される可能性である。
『J3クラブライセンス交付規則』では、基準を満たさない場合でもJリーグ理事会の判断により、制裁付きでライセンスを交付できるとされている。
財務基準F.01およびF.06が未充足の場合、「原則として、対象シーズンの勝点減(最大10点)とする」ことが定められている。この場合、当該クラブにはJ2ライセンスは交付されない。
引用終わり出典J3クラブライセンス交付規則新規タブで開きます前項の規定にかかわらず、理事会は、第7条から第11条までに定める基準のいずれかを充足しない場合であっても、対象シーズンのJ3リーグの安定開催に支障を及ぼさないと認められる場合には、J3ライセンスを交付することができる。かかる場合、理事会が制裁を科すものとし、制裁の種類はJリーグ規約第142条第1項各号を準用するものとする。ただし、財務基準F.01第3項および財務基準F.06第3項に定める基準が未充足であったJ3ライセンス申請クラブに対する制裁は、原則として、対象シーズンの勝点減(最大10点)とする。
前項で挙げた交付規則原文との整合性に一定の疑問は残るものの、これまで公表されてきた特例措置の説明を重視するならば、こちらの運用でなければならない、という考え方に基づく可能性の提示である。
実際、昨年9月の「2026特別シーズンクラブライセンス判定結果発表および説明会」の資料には、「2025年度の財務基準は、2025年度決算(2026年1月期)を期限として債務超過が解消されていなければならない」と明記されていた。
ただし、過去のクラブライセンス制度の運用を見ると、競技成績に大きく影響する強い制裁が科された事例はない。
そのため、仮に制裁があるとしても、その内容は比較的軽微なものとなり、勝点減を伴うとしても、最大値である10点減までは科されないのではないかと予想する。
また、高知が債務超過に陥ったのはJFL所属時代であった点も、一定程度考慮される可能性がある。
ここまでは、シーズン移行に伴い、2025年度を12ヶ月間、26特別シーズンに対応する年度を5ヶ月間とするクラブを前提とした運用を見てきた。
一方で、2025年度の事業年度を17ヶ月間とし、2026年6月を決算期とするクラブも少数ながら存在する。次に、それらのクラブの取扱いを考察する。
事業年度が17ヶ月のクラブの扱い
結論を先に言うと、「期末である2026年6月に債務超過に陥らないことを合理的に説明すること」が、2026/27シーズンのライセンス交付の条件となると考察する。
なお、事業年度が17ヶ月のクラブの扱いについては、Jリーグから公式な見解は示されていない。複数の情報を繋ぎ合わせた傍証的な考察であることを承知いただきたい。
昨年9月の「2026特別シーズンクラブライセンス判定結果発表および説明会」の資料には、「(シーズン移行にあわせて、2026年6月までの17ヶ月決算とする場合は、2026年1月での債務超過解消は猶予する)」と記されていた。
また、今年改定されたクラブライセンス交付規則・運用細則には、「なお、決算期変更などにより、事業年度が1年未満または1年を超える場合には、判定方法はFIBが決定するものとする」と記されている。
財務基準F.01
出典J1・J2クラブライセンス交付規則 運用細則新規タブで開きます(2) 提出された財務諸表に基づいて審査を行い、以下のいずれかに該当する場合は基準F.01を満たさないものとする。なお、決算期変更などにより、事業年度が1年未満または1年を超える場合には、判定方法はFIBが決定するものとする。
① 3期以上連続で当期純損失を計上した場合(ただし、ライセンスを申請した日の属する事業年度の前年度末日現在の純資産残高がライセンスを申請した日の属する事業年度の前年度の当期純損失の額の絶対値を上回っている場合は本項目に該当しないものとみなす)。なお、本項目は、2030年のライセンス申請において2027年度決算を1期目として適用を開始するものとする。
② ライセンスを申請した日の属する事業年度の前年度末日現在、純資産の金額がマイナスである(債務超過である)場合。なお、本項目は、2025年のライセンス申請において2024年度決算には適用しない。また、2029年のライセンス申請から適用するものとし、2026年から2028年のライセンス申請においては適用しない。さらに、2029年のライセンス申請においては、ライセンスを申請した日の属する事業年度の前年度末日において債務超過であったとしても、さらにその前年度末日において既に債務超過であって、ライセンスを申請した日の属する事業年度の前年度末日において債務超過額がその前年度の債務超過額と同額かまたは当該債務超過額より減少しているときは、本項目に該当しないものとみなす。
前述の通り、26特別シーズンに対応する事業年度(2026年6月期)は「特例措置」の対象である。そのため、「事業年度を17ヶ月とするクラブは債務超過を解消しなくてもよい」と読み取ることも可能だった。
ガイナーレ鳥取の新体制発表記者会見
2026年1月に行われたガイナーレ鳥取の新体制発表記者会見新規タブで開きますにおいて、塚野真樹社長から同クラブの債務超過解消に関する言及があった(動画17:10〜)。
発言内容を要約すると以下の通りである。
- 昨年、Jリーグから「決算の期末である2026年6月までに債務超過を解消しなさい」と通達を受けた
- 現在は債務超過解消の道筋が見えた状態
- 3月から4月に提出する書類の内容によって、2026/27シーズンのライセンス判定が下される
クラブが事業年度を17ヶ月にしたと明言したわけではないが、昨年の通達で「2026年6月が期末」となっていることから、事業年度を17ヶ月としたとみられる。
実際、例年であれば4月末にはクラブ独自の決算発表が行われているが、今年は5月に入っても決算発表が行われていない。
そして重要なのは、「2026年6月までに債務超過を解消しなさい」とJリーグが通達している点である。
北海道コンサドーレ札幌の場合
北海道コンサドーレ札幌は昨年、2025年度を17ヶ月間とすることを発表していた。
今年1月の報道新規タブで開きますによると、2026年6月期決算において「営業赤字が約17億円となる見込みであること」「債務超過回避のため約15億円の営業外収益を計上する方針」であることが報じられていた。
引用終わり出典コンサドーレ赤字17億円 債務超過回避へ収益15億円計上方針も確保策示さず新規タブで開きますJ2札幌の運営会社コンサドーレは20日、2026年6月期の営業赤字が約17億円になるとの見通しを示した。債務超過を回避するため、約15億円の営業外収益を計上する方針で、収益をどのように確保するかなどの詳細は明らかにしなかった。
同日にオンラインなどで行われた株主報告会で、J2に降格した26年6月期(17カ月決算)の売上高は約56億円で、12カ月決算だった25年1月期の約52億円から微増にとどまると報告した。営業赤字約17億円に対し、前期末の純資産は3億3千万円で、債務超過を避けるために約15億円を計上する。
仮に、事業年度を17ヶ月とするクラブに対しても、26特別シーズンに対応する事業年度(2026年6月期)をそのまま「特例措置」の対象とするのであれば、必ずしもここで債務超過を回避する必要はない。
この動きは、先の鳥取に対する通達とも整合的である。
これらの情報を総合すると、事業年度を17ヶ月とするクラブについては、財務基準F.06に基づき、「進行中の事業年度の期末(2026年6月)で債務超過に陥らないことを合理的に説明すること」が、2026/27シーズンのライセンス交付の条件となると考えられる。
逆に言えば、これらのクラブの財務状況は、2026/27シーズンのライセンス判定結果に反映される。
北海道コンサドーレ札幌に従来通りJ1ライセンスが付与されているならば、何らかの債務超過回避策が講じられた可能性は高い。
同様に、ガイナーレ鳥取にJ2ライセンスが付与されているならば、2026年6月期までの債務超過解消が達成された可能性が高いと読み取ることができる。
逆に、J3ライセンスが勝点減等の制裁付きで交付される結果となれば、債務超過解消が未達であった可能性が高いと見ることができる。
- 2026/27シーズンクラブライセンス判定 プレビュー 総論
- 2026/27シーズンクラブライセンス判定 プレビュー 財務基準編
- 2026/27シーズンクラブライセンス判定 プレビュー 施設基準編
リンク
Jリーグ規約・規程集新規タブで開きます
aboutj.jleague.jp

2026/27 シーズンに向けクラブライセンス制度を改定 (2025年09月18日)新規タブで開きます
www.jleague.jp

2026特別シーズンクラブライセンス判定結果発表および説明会発言録 (2025年10月03日)新規タブで開きます
www.jleague.jp
高知ユナイテッドSC
北海道コンサドーレ札幌

コンサドーレ赤字17億円 債務超過回避へ収益15億円計上方針も確保策示さず (2026年01月21日)新規タブで開きます
www.hokkaido-np.co.jp
ガイナーレ鳥取

明治安田J2・J3百年構想リーグ新体制発表記者会見 (2026年01月15日)新規タブで開きます
www.youtube.com
