2026年夏のシーズン移行に伴い、Jリーグのクラブライセンス制度におけるスケジュールも変更となった。従来は6月末だったライセンス申請期限は12月末に、9月末だった判定結果発表は翌年3月末に変更される。
一方、移行期に当たる2026/27シーズンのクラブライセンスについては特例的なスケジュールが採用され、申請期限は2026年2月末、判定結果発表は同年5月末に設定された。
この記事では、2026年5月末に発表予定の2026/27シーズンのクラブライセンス審査における施設基準の取扱いを考察する。
- 2026/27シーズンクラブライセンス判定 プレビュー 総論
- 2026/27シーズンクラブライセンス判定 プレビュー 財務基準編
- 2026/27シーズンクラブライセンス判定 プレビュー 施設基準編
施設基準編
2026/27シーズンのクラブライセンス判定においては、施設基準未充足によるライセンス不交付が発生する可能性は低いと考えられる。したがって、この記事はあくまで今後の争点になり得る施設基準に関する情報整理であることを予め断っておきたい。
この記事の要旨は以下の2点である。
- 「例外規定2」及び「全屋根基準の条件付き免除」の内容とその運用について情報整理を行うこと
- 水戸ホーリーホックはホームスタジアム変更により、「例外規定2」の適用によるJ1ライセンス取得から、「全屋根基準の条件付き免除」による運用へ移行するのではないか、という考察
この記事では、制度上の条文と実際の運用の双方を踏まえながら、施設基準の論点を整理していく。
参考: Jリーグスタジアム基準 [2026年度用]新規タブで開きます
参考: 2026特別シーズンクラブライセンス判定結果発表および説明会発言録新規タブで開きます
関連記事: 2026特別シーズン Jリーグクラブライセンス プレビュー 施設基準編
例外規定2
最初に施設基準における例外規定2に関する情報整理を行う。
例外規定2は、Jリーグ規約第34条に定義されている「理想のスタジアム」を将来的に整備することを前提として、一部の基準(入場可能数と大型映像装置)を満たさない場合でも上位ライセンス取得を可能にする仕組みである。
Jリーグ規約第34条〔理想のスタジアム〕
出典Jリーグ規約 (2026年2月1日改正版)新規タブで開きます(1) スタジアムはJリーグスタジアム基準を満たすことに加え、以下の要件を満たすことが望ましい。
① フットボールスタジアムであること
② アクセス性に優れること
③ すべての観客席が屋根で覆われていること
④ 複数のホスピタリティ設備や通信環境を備えていること(2) 前項の「アクセス性に優れる」とは、次の各号のいずれかを充足していることをいう。
① ホームタウンの中心市街地より概ね20分以内で、スタジアムから徒歩圏内にある電車の駅、バス(臨時運行を除く)の停留所または大型駐車場のいずれかに到達可能または近い将来に到達可能となる具体的計画があること
② 前号のほか、観客の観点からアクセス性に優れていると認められること
申請時には具体的な計画を必要としないが、昇格と同時に整備期限が進行する。
昇格後3年目のライセンス申請で「具体的な計画」の提出が義務づけられ、昇格後5年目のシーズン終了までに着工すれば、着工を条件とする「例外規定1」へ切り替えることが可能だ。ただし、そのスケジュールはJリーグ理事会の判断により柔軟に運用される場合がある。
「例外規定2」の適用による昇格は各カテゴリにつき一度まで。ただし効力期間中であれば降格しても再昇格が可能。
この制度はフットボールスタジアム整備を推進する目的で2019年に導入新規タブで開きますされた。
交付規則運用細則における例外規定
出典J1・J2クラブライセンス交付規則 運用細則(2025年10月1日改正版)新規タブで開きます(2) 前項にかかわらず、基準I.01(2)においては、「Jリーグスタジアム基準」に明示した項目についてのみ、以下のとおり例外を設ける。
① ライセンス申請者が、J1・J2ライセンス申請時に、以下のいずれかに該当するものとして「例外適用申請書」を提出し、基準I.01の例外適用が理事会で承認された場合は、基準I.01を満たしているものとする
イ. 要件を満たすための工事が着工されており、かつ、当該ライセンス申請時から4年以内に到来する最終のシーズンの開幕前日までに工事完了・供用開始し、工事期間中も試合開催に支障をきたさないと合理的に認められる場合
ロ. Jリーグ規約第34条第1項の要件を満たすスタジアムを将来的に整備することをライセンス申請者が文書で約束した場合② 前号ロの例外に基づきライセンス申請者がJ1またはJ2に昇格したときは、ライセンス申請者は、当該昇格決定後3年以内に到来する最終のライセンス申請時までに、場所・予算・整備内容を備えた具体的なスタジアム整備計画を提出しなければならず、かつ、当該昇格決定後5年以内に到来する最終のライセンス申請時までに工事完了し、供用開始が行われなければならない。ただし、工事完了・供用開始までの期限については、ライセンス申請者が当該期限内に到来する最終のJ1・J2ライセンス申請時に前号イに基づく例外申請を行い、これが認められたときは、4年以内に到来する最終のシーズンの開幕の前日まで延長される。なお、想定外の事象が発生し、やむを得ないと認められる場合は理事会にて例外規定の適用の有無を決定する
③ 第1号ロの例外に基づきライセンス申請者がJ2に昇格した後に、J1ライセンスを申請する場合においても、前号の期限は変更されない
④ 第1号ロの例外に基づきライセンス申請者がJ1またはJ2に昇格した後に、第2号に定められた期限を遵守できなかった場合、基準I.01の例外適用は効力を失う。ただし、翌年以降のライセンス申請において整備計画の提出等が行われた場合は、理事会にて例外規定の適用の有無を決定する
⑤ 第1号ロの例外規定に基づきライセンス申請者がJ1またはJ2に昇格したときは、以後の同一カテゴリーのライセンス申請においては、当該例外規定を用いることはできない
今回の2026/27シーズンのクラブライセンス審査において、「例外規定2」の適用が大きな争点となるクラブは存在しないとみられる。
ここからは例外規定2に基づいた各クラブのステータスを確認する。
例外規定2のカウントが新たに始まるクラブ
ヴァンラーレ八戸、栃木シティ、テゲバジャーロ宮崎(J2ライセンス)
ヴァンラーレ八戸、栃木シティ、テゲバジャーロ宮崎は2025年、それぞれのホームスタジアムがJ2基準の入場可能数10,000人を満たしていないため、「例外規定2」を適用してJ2ライセンスを取得し、昇格した。(宮崎は他にJ1・J2基準で必須である「大型映像装置」も満たしていない)
上記3クラブは、昇格後3年目に当たる2028/29シーズン中に行われるライセンス審査(2028年12月申請締切、2029年3月判定結果発表)で「理想のスタジアム」の「具体的な計画」の提出が必要となり、これが満たせない場合、J2ライセンスを取得することはできない。
なお、J2ライセンス取得時とJ1ライセンス取得時は、それぞれ別個に例外規定2の適用を受けることができる。したがって、2026/27シーズンのクラブライセンス申請において、上記3クラブが例外規定2の適用によるJ1ライセンスを申請する可能性はあり得る。
例外規定2のカウントが始まっているクラブ
いわきFC(J2ライセンス)
いわきFCは2022年、ホームスタジアムであるハワイアンズスタジアムいわきがJ2基準の入場可能数10,000人を満たしていないため、「例外規定2」を適用してJ2に昇格した。
J2昇格後3年目に当たる2025年のライセンス申請において、新スタジアムの「具体的な計画」を提出し、ライセンスを取得した。(ここで求められるのはJ2ライセンスにおける「例外規定2」の「具体的な計画」であるが、いわきFCは別途、「例外規定2」の適用によりJ1ライセンスを取得している)。
J2昇格後5年目に当たる2027/28シーズン終了時(2028年6月)までに新スタジアムの着工を行えば、「例外規定1」に切り替えることができる。期限いっぱいで「例外規定1」に切り替えた場合、2031/32シーズン開幕までに完成することが必要となる。
SC相模原(J2ライセンス)
SC相模原は2020年、ホームスタジアムである相模原ギオンスタジアムがJ2基準の入場可能数10,000人を満たしていないため、「例外規定2」を適用してJ2に昇格した。
J2昇格後3年目に当たるのは2023年であったが、コロナ禍の影響を受け、「具体的な計画」の提出期限が2025年に延長となった。
2025年のライセンス申請において新スタジアムの「具体的な計画」を提出したが、FIBから「十分な確度を持っているとは言えない」と評価された。しかしながら理事会の判断により、「具体的な計画」の提出期限を1年延長した上で、引き続き「例外規定2」を適用しJ2ライセンスが交付された新規タブで開きます。
したがってSC相模原は、「具体的な計画」を2026年12月までに再策定し、提出する必要がある。この場合、2028/29シーズン終了時(2029年6月)までに新スタジアムの着工を行えば、「例外規定1」に切り替えることができる。
相模原の事例は、「例外規定2」が規則上の期限管理だけでなく、理事会判断により柔軟に運用される余地があることを示したケースといえる。
関連記事: 2026特別シーズン Jリーグクラブライセンス レビュー
例外規定2の適用を終えたクラブ
いわてグルージャ盛岡(J2ライセンス)
いわてグルージャ盛岡は2021年、ホームスタジアムであるいわぎんスタジアムがJ2基準の入場可能数10,000人を満たしていないため、「例外規定2」を適用してJ2に昇格した。
J2昇格後3年目に当たるのは2024年であったが、コロナ禍の影響を受け、「具体的な計画」の提出期限が2025年に延長となった。
しかし、2024年のJ3リーグで20位となり、JFLに降格。J2ライセンスの申請資格を失ったため、例外規定2も失効した。
制度導入当初の規定では、再度J2ライセンスを取得するには、J3に昇格したうえで基準を満たすスタジアムを着工し、「例外規定1」を適用するのが最速である、と理解されてきた。
しかしながら、運用細則の改正(2024年または2025年)により、一度失効した「例外規定2」であっても、「具体的な計画」の提出を前提として、理事会判断のもと再度有効化される可能性があるという。
引用終わり出典J1・J2クラブライセンス交付規則 運用細則(2025年10月1日改正版)新規タブで開きます④ 第1号ロの例外に基づきライセンス申請者がJ1またはJ2に昇格した後に、第2号に定められた期限を遵守できなかった場合、基準I.01の例外適用は効力を失う。ただし、翌年以降のライセンス申請において整備計画の提出等が行われた場合は、理事会にて例外規定の適用の有無を決定する
この解釈に基づけば、十分な確度を持つ「具体的な計画」を提出することで、いわてグルージャ盛岡は再び「例外規定2」の適用を受け、J2ライセンスを取得できる可能性がある。
FC今治(J2ライセンス)
FC今治は2024年、ホームスタジアムであるアシックス里山スタジアムがJ2基準の入場可能数10,000人を満たしていないため、「例外規定2」を適用してJ2に昇格した。
2025年に申請した2026特別シーズンのライセンス判定において、今治は「例外規定2」の適用なしでJ1ライセンスを取得した。これはアシックス里山スタジアムが2024年に緩和した「入場可能数」の基準新規タブで開きますを満たしたことによる。
従来の入場可能数基準に対して、「ただし、Jリーグ規約第34条に定める「理想のスタジアム」の要件を満たし、ホームタウン人口等の状況、観客席の増設可能性(特に敷地条件)、入場料収入確保のための施策等を踏まえて理事会が総合的に判断した場合、5,000人以上(全席個席であること)で基準を満たすものとする。」という一文が加えられた。
2024年改定後の入場可能数
出典Jリーグスタジアム基準改定について新規タブで開きますI. スタジアム規模等 2. 入場可能数
J1は15,000人以上、J2は10,000人以上(芝生席は観客席とはみなされない)
椅子席で、J1は10,000席以上、J2は8,000席以上の座席があること(ベンチシートは1席あたりの幅を45cm以上とする)
ただし、Jリーグ規約第34条に定める「理想のスタジアム」の要件を満たし、ホームタウン人口等の状況、観客席の増設可能性(特に敷地条件)、入場料収入確保のための施策等を踏まえて理事会が総合的に判断した場合、5,000人以上(全席個席であること)で基準を満たすものとする。
例外規定2の適用を終える可能性のあるクラブ
水戸ホーリーホック(J1ライセンス)
水戸ホーリーホックは2025年、ホームスタジアムであるケーズデンキスタジアム水戸がJ1基準の入場可能数15,000人を満たしていないため、「例外規定2」を適用してJ1に昇格した。2026/27シーズンを昇格後1年目として、「例外規定2」のカウントが始まる予定であった。
しかし後述するように、2026年2月にホームスタジアム変更を発表。今後は「例外規定2」を適用せずにJ1ライセンスを取得する予定となっている。
全屋根基準の条件付き免除
次に「全屋根基準の条件付き免除」について確認する。この記事では、その運用において「陸上競技場には比較的厳しく、フットボールスタジアムに対しては比較的緩く」運用されていることを確認する。
「全屋根基準の条件付き免除」という名称については、このような規程が規則内に存在するわけではなく、実際に行われている運用を説明するために、便宜上そのように呼んでいるだけである。
なお、この免除措置は前述の「例外規定」とは無関係である。この点は、特にメディア報道において混同されるケースが多く見られるため、改めて強調しておきたい。
混同される要因としては、対象となっている鹿児島と琉球が、別途「例外規定2」(入場可能数)を適用してJ1ライセンスを取得していることが挙げられる。もっとも、両クラブともJ1昇格実績はないため、「例外規定2」に基づく整備スケジュールはまだ進行していない。
全屋根基準の内容
「新設及び大規模改修を行うスタジアムについては、原則として屋根はすべての観客席を覆うこと」(全屋根基準)は、2013年の『スタジアム検査要項』に「具備が必要とされるものの、期限については今後検討を続けていく条件」として掲載され、2015年からJ1・J2基準において必須となった。
なお、2026年の『Jリーグスタジアム基準』改定で、「ただし、将来の拡張工事や芝生育成等を考慮し、安全対策を確認の上Jリーグが認めた場合は、この限りではない。」という一文が追加された。
引用終わり出典Jリーグスタジアム基準 [2026年度用]新規タブで開きますI. スタジアム規模等 4.屋根
新設及び大規模改修を行うスタジアムについては、原則として屋根はすべての観客席を覆うこと。ただし、将来の拡張工事や芝生育成等を考慮し、安全対策を確認の上Jリーグが認めた場合は、この限りではない。
施設基準I.09「スタジアム:屋根」との関係
この全屋根基準は、『J1・J2クラブライセンス交付規則』における施設基準I.09「スタジアム:屋根」(観客席の1/3以上に屋根を設けるB等級基準)とは別個の概念である。
全屋根基準は『Jリーグスタジアム基準』に規定されており、これを満たさないスタジアムはJ1・J2基準に適合せず、結果として施設基準I.01「公認スタジアム」を充足できないため、ライセンスが交付されないという論理である。
| 基準 | 根拠 | 対象 | 屋根 | 未充足の場合 |
|---|---|---|---|---|
| 施設基準I.09 スタジアム:屋根 | J1・J2クラブライセンス交付規則 | すべてのスタジアム | 観客席の1/3以上 | 制裁(対象クラブ名の公表) |
| 全屋根基準 | Jリーグスタジアム基準 | 2015年以降に新設及び大規模改修を行ったスタジアム | 原則としてすべての観客席(例外あり) | ライセンス不交付 |
施設基準I.09 スタジアム:屋根
出典J1・J2クラブライセンス交付規則(2025年10月1日改正版)新規タブで開きますB等級 (1) スタジアムの屋根は、観客席の3分の1以上が覆われていなければならない。
C等級 (2) 前項にかかわらず、スタジアムの屋根は、すべての観客席を覆うことが望ましい
全屋根基準の運用
全屋根基準は、必須化(2015年)より前に新設及び大規模改修が行われたスタジアムには適用されない。
また、その運用において、陸上競技場に対しては厳しく、フットボールスタジアムに対しては比較的緩く適用される傾向がある。
陸上競技場に対する運用
ブラウブリッツ秋田、鹿児島ユナイテッドFC、FC琉球の3クラブは、J2ライセンス申請時に、近年改修したホームスタジアム(既存陸上競技場)に対する全屋根基準の免除を受けてきた。免除の理由は、県や市などのステークホルダーが「新スタジアム整備」の意向を示したことによる。
しかしながら、上記3クラブはJ2ライセンス交付後5年以上経過しているにも関わらず、免除の理由となった「新スタジアム整備」が一向に進捗しないことから、2023年に注意喚起を受けた。
このことから、ライセンス審査においては、新スタジアム整備の「一定の進捗」が確認されることがJ2ライセンス継続の条件となっている。
秋田の経緯および現状(2025年の発言録より)
出典2026特別シーズンクラブライセンス判定結果発表および説明会発言録新規タブで開きます2019シーズンのクラブライセンス申請において、県・市の新スタジアム整備の意向を受け、ソユースタジアムへの屋根設置が免除され、J2クラブライセンスが交付された
しかしながら、その後7年が経過している現時点においても、新スタジアム整備に関する基本計画すら策定されておらず、実現が不透明であると言わざるを得ない状況であるが、昨年からは一定の進捗が確認できたと判断
鹿児島の経緯および現状(2025年の発言録より)
出典2026特別シーズンクラブライセンス判定結果発表および説明会発言録新規タブで開きます2018シーズンのクラブライセンス申請において、県・市の新スタジアム整備の意向を受け、白波スタジアムへの屋根設置が免除され、J2クラブライセンスが交付された
しかしながら、その後8年が経過している現時点においても、新スタジアム整備に関する基本計画すら策定されておらず、実現が不透明であると言わざるを得ない状況であるが、昨年からは一定の進捗が確認できたと判断
琉球の経緯および現状(2025年の発言録より)
出典2026特別シーズンクラブライセンス判定結果発表および説明会発言録新規タブで開きます2018シーズンのクラブライセンス申請において、県からの新スタジアム整備の意向を受け、沖縄県総合運動公園陸上競技場への屋根設置が免除され、J2クラブライセンスが交付された
しかしながら、その後8年以上が経過している現時点においても、新スタジアム整備に関する大きな進展は確認できていない状況であるが、昨年からは一定の進捗が確認できたと判断
今回の2026/27シーズンのライセンス審査において、この3クラブの「全屋根基準の条件付き免除」が大きな争点となる可能性は低いと思われる。したがって、今回の記事では上記3クラブの動向の整理は割愛する。(昨年までの動向はこちらの記事)
次回の2027/28シーズンのライセンス審査においては、これまで同様に進捗が問われると考えられる。
また、新築の陸上競技場においても、以下の施設は全屋根基準を満たさないことから、「J1・J2基準を満たさない」とする見解が示されている。
- カクヒログループ アスレチックスタジアム(青森、2016年着工、2019年竣工、収容人数20,809人)
一方で、全屋根基準が必須化された2015年以降に大規模改修を行った下記の陸上競技場については、屋根がすべての観客席を覆っていないにもかかわらず、2026年時点で全屋根基準への抵触が問題視されているという話は確認されていない。具体的にどのような運用が行われているかは不明である。
- 町田GIONスタジアム(町田、改修、2019年着工、2021年竣工)
フットボールスタジアムに対する運用
一方で、全屋根基準必須化後に新築及び大規模改修を行ったフットボールスタジアムについては、比較的緩い運用が適用されている。
例えば、以下の近年新設・改修された、また今後新設・改修予定のスタジアムは、全屋根基準を厳密に適用した場合、基準を満たしていないものと考えられる。
- ミクニワールドスタジアム北九州(北九州、2015年着工、2017年竣工)
- 東大阪市花園ラグビー場(FC大阪、改修、2017年着工、2018年竣工)
- YANMAR HANASAKA STADIUM(C大阪、改修、2019年着工、2021年竣工)
- アシックス里山スタジアム(今治、2021年着工、2023年竣工、増設、2026年着工、同年竣工予定)
- ゴーゴーカレースタジアム金沢(金沢、2021年着工、2024年竣工)
- モンテディオ山形新スタジアム(山形、2025年着工、2028年竣工予定)
これらのスタジアムについては、実際のライセンス運用を見る限り、将来的な拡張余地などを考慮した柔軟な運用が行われているように見える。また2026年現在、前述の秋田、鹿児島、琉球の例のように、免除理由とみられる「拡張」や屋根の設置について進捗を求める動きは見られていない。
そして2026年の『Jリーグスタジアム基準』改定で、全屋根基準に「ただし、将来の拡張工事や芝生育成等を考慮し、安全対策を確認の上Jリーグが認めた場合は、この限りではない。」という一文が追加された。これは、従来は運用上の例外とみられていた状態を、基準改定によって明文化したものとみることもできる。
水戸ホーリーホックのホームスタジアム変更
以上の議論を踏まえた上で、2026/27シーズンからのホームスタジアム変更を表明した水戸ホーリーホックは、「例外規定2」の適用によるJ1ライセンス取得から、「全屋根基準の条件付き免除」による運用へ移行するのではないか、という考察をしていく。
水戸ホーリーホックは2026年2月、2026/27シーズンよりホームスタジアムを水戸信用金庫スタジアム(笠松運動公園陸上競技場・茨城県那珂市)に変更新規タブで開きますすることを発表した。
水戸信用金庫スタジアムの収容人数は22,002人新規タブで開きます(消防法基準・芝生席含む)。『Jリーグスタジアム基準』で用いられる「入場可能数」は現時点で不明だが、J1基準の15,000人を上回る公算である。
入場可能数の算定方法(2026年版)
出典Jリーグスタジアム基準 [2026年度用]新規タブで開きます※入場可能数: ホームゲーム開催時に使用可能な数を指し、下記(1)、(2)、(3)の合計数とする。
(1) 観客席(入場券が発券できる座席の数)
イ.見切り席、常設の記者席、実況放送室等の座席は含まない。
ロ.常設の飛び降り防止エリアの席数は含まない。ただし当該エリアが調整可能な場合は数に含む。
ハ.ホームクラブとビジタークラブの観客間の緩衝地帯の座席数は含むが、常設の緩衝地帯の場合は含まない。
ニ.立ち見エリアは施設管理者と協議の上入場可能な数とするが、新設及び大規模改修を行うスタジアムについては、観客席数の立ち見席は1段床あたり1人とし、1席の幅は45cm以上、段床の奥行は80cm以上とする。
ホ.J3ライセンスに限り、以下の要件を満たす芝生席については、観客席とみなす。
・芝生席の勾配は、傾斜 20% 以下・角度11°以下 とする。
・芝生席での1人あたりの面積は、 陸上競技場の場合は0.6 ㎡(幅 0.6m × 奥行 1m)以上 、 フットボールスタジアムの場合は、 0.48 ㎡(幅 0.6m × 奥行 0.8m )以上とする。(2) VIP席の数
イ.常設のVIP席。
ロ.個室ラウンジ付きの観戦エリアは、テラスにある座席の数とする。個室ラウンジ内の座席数は含まない。(3) 車椅子席の数
イ.車椅子観戦エリアは座席がないが、車椅子1台分につき1席と数える。
ロ.車椅子のヘルパー席は、車椅子席に含まない。
ハ.常設の椅子が設置され、かつ実際に使用されている車椅子のヘルパー席は観客席数に含める。
ドーピングコントロールルームなど、現状Jリーグ基準を満たしていない部分については、クラブが約1億円を負担して2026/27シーズン開幕までに改修を行う予定となっている。
経緯
水戸ホーリーホックの現ホームスタジアムであるケーズデンキスタジアム水戸(入場可能数10,152人)は、J1基準の入場可能数を満たしていない。2017年まで、同クラブのホームタウン内にJリーグ基準を満たすスタジアムは他に存在しなかった。
水戸ホーリーホックのホームタウンは当初、水戸市のみであったが、2017年にひたちなか市、笠間市、那珂市、小美玉市、茨城町、城里町、大洗町、東海村を追加。(更に2022年には日立市、高萩市、北茨城市、常陸大宮市、常陸太田市、大子町が、2026年には石岡市、筑西市、桜川市がホームタウンとなった)
水戸ホーリーホックは2018年、2019年のライセンス申請において、J1昇格時のみ笠松運動公園陸上競技場(那珂市)をホームスタジアムとすることで、「解除条件付J1ライセンス」を取得した。
解除条件付ライセンスの詳細(2019年の発言録より)
出典(2020シーズン)クラブライセンス交付判定結果および説明会メディアブリーフィング 発言録新規タブで開きます2-2.解除条件付交付
(1)解除条件付交付とは
◆クラブライセンス交付判定についての解除条件があり、FIBより通知された解除条件が成就した場合には、付与されたJ1クラブライセンス効力を失い、J2クラブライセンスに変更される
◆よって、クラブライセンス判定時には規則上「Jリーグクラブライセンスの交付拒絶の決定を受けた場合」に該当すると取扱われ、クラブは上訴申立てを行うことができる
(Jリーグクラブライセンス交付規則 第26条第3項) ※2014年に鳥取に対して行われた「停止条件付交付」との違い…停止条件付交付は、停止条件を充足した場合に限り、クラブライセンス付与の効力が発生昨年、初めて出てきた項目ですが、水戸に対して解除条件付交付になりました。過去においては、昨年度の水戸に加えて2014年に、意味合いが違いますが、停止条件という判定結果に付与されるものがついたことがございました。
(2)解除条件付の内容
◆11/24の明治安田生命J2リーグ最終節、または12/1(予定)より始まるJ1参入プレーオフ決定戦後、昇格のための順位要件を充足できなかった場合(=スタジアムの短期改修工事を行わないことが確定した場合)、J1クラブライセンスからJ2クラブライセンス付与へ変更される
◆上記シーズン終了時に改めて、Jリーグより解除条件付交付クラブの状況を踏まえたクラブライセンス交付の最終結果について発表する予定水戸からは、順位要件が充足されなかった場合、スタジアムの改修工事は行わないと聞いておりますので、J1ライセンスの基準を満たすスタジアムが整備できないことが、この時点で確定しますので、J1からJ2ライセンスへ変更となります。水戸の場合は、他のスタジアムと異なり、短期間の改修工事で対応が可能です。本来は半年や1年かかることが多いですが、短期間で改修工事ができることもあって、このような対応を取らせていただいています。J1で来年戦えるかどうかということが判明した後で改修を行っても、開幕戦に十分間に合うという前提の条件が水戸にはあるので、このような解除条件をつけさせていただいております。順位要件によって、水戸は改修をするかどうかの意志決定が入りますので、昇格できない場合は、解除させていただき、J1からJ2になるという設定です。
2020年以降のライセンス申請においては、2019年導入の新制度「例外規定2」の適用により、ケーズデンキスタジアム水戸をホームスタジアムとしてJ1ライセンスを取得していた。
| シーズン | ライセンス | 申請スタジアム |
|---|---|---|
| 2012 | J2 | ケーズデンキスタジアム水戸 |
| 2013 | J2 | ケーズデンキスタジアム水戸 |
| 2014 | J2 | ケーズデンキスタジアム水戸 |
| 2015 | J2 | ケーズデンキスタジアム水戸 |
| 2016 | J2 | ケーズデンキスタジアム水戸 |
| 2017 | J2 | ケーズデンキスタジアム水戸 |
| 2018 | J2 | ケーズデンキスタジアム水戸 |
| 2019 | J1(解除条件付) | 笠松運動公園陸上競技場 |
| 2020 | J1(解除条件付) | 笠松運動公園陸上競技場 |
| 2021 | J1(例外規定2) | ケーズデンキスタジアム水戸 |
| 2022 | J1(例外規定2) | ケーズデンキスタジアム水戸 |
| 2023 | J1(例外規定2) | ケーズデンキスタジアム水戸 |
| 2024 | J1(例外規定2) | ケーズデンキスタジアム水戸 |
| 2025 | J1(例外規定2) | ケーズデンキスタジアム水戸 |
| 2026 | J1(例外規定2) | ケーズデンキスタジアム水戸 |
水戸ホーリーホックは2019年11月に新スタジアム構想を発表。クラブ創設30周年にあたる2024年の竣工を目指していたが、建築費の高騰などの理由により、2026年現在、事実上白紙の状態となっている。
補足: ケーズデンキスタジアム水戸の改修計画について
ケーズデンキスタジアム水戸の所有者である水戸市は、2013年頃から、同スタジアムをJ1基準および第1種陸上競技場基準に対応させるための改修構想を進めていた。この構想は『水戸市第6次総合計画』(2014年〜2023年)にも位置付けられている。
当時の構想では、両ゴール裏席(芝生席)の拡張および立見席化により、J1基準の入場可能数15,000人と第1種陸上競技場基準への対応を図る予定であった。報道によると、概算事業費は5億〜6億円とされていた。
しかし2014年、当初の計画は行き詰まる。Jリーグ『スタジアム検査要項』における立ち見席の算定方法が、新設及び大規模改修を行うスタジアムに限り、消防法基準から個席と同一基準へ変更されたことで、改修には追加の用地取得が必要となったためである。
また前述のように、2015年には新設及び大規模改修を行うスタジアムに対する全屋根基準が、J1・J2基準において必須化された。この基準改定を直接反映した報道は確認できないものの、改修計画にも一定の影響を与えた可能性がある。
水戸市による用地買収は難航し、計画は停滞。その後、具体化したのは2019年であった。用地取得交渉が前進したことで、2019年度には基本計画の策定作業に着手している。なお、この時点での概算事業費は約30億〜40億円まで拡大していた。(具体的な改修内容は不明)
しかし同年11月、クラブが独自の新スタジアム構想を発表したことから、改修計画は見直しとなった。
なお、ケーズデンキスタジアム水戸の第1種陸上競技場化については、後続の『水戸市第7次総合計画』(2024年〜2033年)にも位置付けられている。
今回のライセンス審査の見通し
水戸ホーリーホックは、水戸信用金庫スタジアム(当時:笠松運動公園陸上競技場)をホームスタジアムとして2019、2020シーズンのJ1ライセンスを取得していることから、2026/27シーズンにおいてもJ1ライセンスの交付に大きな問題はないと考えられる。
ホームスタジアム変更により、同クラブのJ1ライセンスは「例外規定2」適用によるものではなくなる。
「例外規定2」の適用による昇格は各カテゴリにつき一度までであるため、今後はJ1ライセンス申請で「例外規定2」を適用することはできない。
全屋根基準の条件付き免除となる可能性
一方で、水戸信用金庫スタジアムへの移転によってJ1ライセンス問題が完全に解決したかについては疑問が残る。その根拠として、水戸信用金庫スタジアムでは2019年の国民体育大会に向けた改修工事が行われていることが挙げられる。
水戸信用金庫スタジアム改修工事の概要は以下の通り。
- スタンド、大型映像装置、メインスタンド屋根、照明塔、電気設備などを改修
- 2015年着工、2018年竣工
- 総工費は約17億円
先に見たように、『Jリーグスタジアム基準』では「新設および大規模改修を行うスタジアムには、原則すべての観客席を覆う屋根を設置すること」(全屋根基準)がJ1・J2基準において必須となっている。水戸信用金庫スタジアムはこの基準を満たしていない可能性がある。
先に確認したように、全屋根基準のこれまでの運用では、既存陸上競技場に関しては厳しく適用されてきた。
秋田、鹿児島、琉球の例を見ると、市や県などのステークホルダーによる新スタジアム整備の意向などにより全屋根基準が免除される場合があるが、その進捗が芳しくない場合、Jリーグから警告を受けることがある。
仮に水戸信用金庫スタジアムが全屋根基準を満たしていないと判断されるならば、今回(また可能性として2018年、2019年のライセンス申請においても)、同スタジアムでJ1ライセンスを取得するには、「全屋根基準」の免除を受けるための一定の材料が必要になると考えられる。その達成には一定期間の猶予が与えられる可能性があるが、進捗が芳しくない場合、将来的なライセンス取得に懸念が生じる状態となる可能性がある。
なお、水戸に2026/27シーズンのJ1ライセンスが交付された場合、それが「全屋根基準の条件付き免除」によるものであるかどうかは、「例外規定」とは異なり、基本的には公表されない。
これが明らかになるのは、メディアブリーフィングにおけるクラブライセンスマネージャーとの質疑応答や、前述の3クラブと同様に「免除事由」の進捗不足によって問題が表面化した場合などに限られると考えられる。
Jリーグの裁量拡大と「スタジアム・アリーナ改革」
スタジアムに関する基準は、当初は比較的機械的・画一的に運用されてきた。しかし、2019年の例外規定導入や、入場可能数を緩和した2024年の『Jリーグスタジアム基準』改定などを経て、ライセンス審査におけるJリーグ側の裁量は年々大きくなってきていると評価できる。フットボールスタジアムに対して比較的柔軟な運用が見られるのも、その裁量による部分が大きいと考えられる。
こうした運用変化の背景には、Jリーグ当局が従来の基準運用について、「観戦環境や収益性の向上」が置き去りにされたまま施設整備が検討されるケースに課題意識を持っていたことがある。
引用終わり出典フットボールスタジアム整備を推進するためのスタジアム基準の改定について 発言録新規タブで開きます二つ目は、基準充足に重きを置いた施設整備と書かせていただきましたが、これまで、競技面と観戦環境、安全性、ホスピタリティを重視し、より良いJリーグを運営するためにスタジアム環境向上を推進してきましたが、スタジアム基準によって、J1、J2への昇格の足切りをすることを考えて基準化したのではありません。
しかしながら、逆に基準を満たしたい方々からすると、基準充足に向けた投資が検討されるケースがあり、我々が重視している、観戦環境や収益性の向上が置き去りになって検討されるケースが見受けられるようになりました。
例えば具体的には、入場可能数がJ1:15,000人、J2:10,000人、J3:5,000人をクリアできさえすれば、ホームタウンのどこにスタジアムを置いてもよいという考えにならないように、新たな基準をしっかり整備しなおして内外にお伝えする必要があると考えています。
そして、その問題意識は、平成28年度(2016年度)に開始された、スポーツ庁の「スタジアム・アリーナ改革新規タブで開きます」とも通底している。同改革では、「観客を意識した施設」や「収益性の向上」の重要性が掲げられている。
引用終わり出典スタジアム・アリーナ改革ガイドブック<第3版>新規タブで開きます〇 みるスポーツの潜在力を最大限発揮し、スポーツがもたらす価値を高めることのできる、観客を意識した施設の重要性
定期的に数千人から数万人という多くの人を集め、人々に感動や熱狂、一体感等をもたらす「みるスポーツ」の価値や潜在力を最大限に発揮するためには、従来のように主にスポーツを「する」ための仕様や、公共施設としてシビルミニマムな水準が重視されていた競技場や体育館といった施設ではなく、スポーツをみる観客の満足度を高め、付加価値の高いサービスを提供でき、多くの人の再訪を促しながら、収益の獲得・向上を図ることのできる施設としてスタジアムやアリーナを整備することが重要である。
なお、スポーツ庁の「スタジアム・アリーナ改革」は、令和8年度(2026年度)から、経済産業省との連携により、より広範なエリアマネジメントを視野に入れた「スポーツコンプレックス推進事業新規タブで開きます」へと再編され、「スタジアム・アリーナ改革」はその下位施策として位置付けられる形となった。
- 2026/27シーズンクラブライセンス判定 プレビュー 総論
- 2026/27シーズンクラブライセンス判定 プレビュー 財務基準編
- 2026/27シーズンクラブライセンス判定 プレビュー 施設基準編
リンク
Jリーグ規約・規程集新規タブで開きます
aboutj.jleague.jp

2026特別シーズンクラブライセンス判定結果発表および説明会発言録 (2025年10月3日)新規タブで開きます
www.jleague.jp
Jリーグスタジアム基準改定について (2023年12月19日)新規タブで開きます
aboutj.jleague.jp
水戸ホーリーホック

水戸信用金庫スタジアム(笠松運動公園陸上競技場)のホームスタジアム利用に係る発表のお知らせ (2026年02月27日)新規タブで開きます
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スタジアム・アリーナ改革

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